スマートフォンやタブレットが生活必需品並みに普及した今、自宅でのインターネット環境構築にWi-Fiを活用している人は非常に多いと思います。
長い間これといって大きな進化が見られなかったWi-Fiというシステムですが、ここ数年になってメッシュWi-Fiやメッシュネットワークというキーワードを目にする機会が増えたのではないでしょうか。
何となく聞いたことがあるメッシュWi-Fi。しかしそれが新しいWi-Fiの形・システムであることはわかってもどういった機能や特徴を持ち、従来のWi-Fiとは具体的に何が違うのか?という点はよくわからない人も多いはず。
そこで本記事では、メッシュWi-Fiとは何か?という疑問を仕組みと特徴、従来のWi-Fi中継器との違いから解説し、どういった場合にメリットがあるシステムであり、逆にデメリットはどこなのか?、そしてどういった人におススメできるようなシステムなのか?といった点をまとめて紹介します。
メッシュWi-Fiとは?
メッシュWi-Fiとは端的に言ってしまうとメッシュネットワークを無線LANに応用したシステムのこと。多くの人が「メッシュ」という単語から想像している通り、メッシュWi-Fiにおいてはインターネットに接続された親機となる1台のメッシュルーターと子機となる複数台のメッシュルーターが相互に接続され、網目状のネットワークを構築します。また、この時の子機をサテライト機と呼びます。
サテライト機と親機はそれぞれが相互に情報の受け渡しを行い、自律的にネットワークを構築。事実上の働きとしては親機・子機といった区別はほとんど無く、サテライト機は親機の分身としてほぼ同じ働きをします。
ユーザ側が特に設定を行ことなく、スマートフォンやノートPC等の端末は自動的に最適なWi-Fiポイントに接続されます。ユーザーが端末を持った状態で移動したとしても”最適なWi-Fiポイントに接続”されている状態は維持されるため、サテライト機同士が互いに接続されることでメッシュネットワークという1つの強力なWi-Fiルーターが出現するイメージです。
ちなみに、この”最適なWi-Fiポイント”とは必ずしも物理的に最短距離にあるWi-Fiポイントではない点にも注目。仮に最も近い距離にあるWi-Fiポイントが非常に混雑しているなど通信速度が出ない状況では、別の快適なWi-Fiポイントへと自動で接続されるのです。
また、簡単な初期設定のみでサテライト機はいつでも複数台追加できることもメッシュWi-Fiの特徴の1つ。リビングのみで運用していたメッシュWi-Fiを隣の部屋や二階にも拡張したい、といった場合はサテライト機を購入して設置するだけ。手軽にWi-Fiエリアをどんどん拡大していくことが可能です。
追加とは逆にサテライト機を撤去する場合も手軽さは同様。というのも上で述べたようにサテライト機はそれぞれが自律的にネットワークを構築するため、サテライト機が減ったとしても減った状態で最適なネットワークが自動で構築されます。そのため複数のサテライト機でメッシュWi-Fiを運用している状態でそのうちの1台のサテライト機に不具合が発生し使えなくなってしまったとしても、ユーザー側は何も設定することなくメッシュWi-Fiは稼働している分で最適な状態を維持してくれます。
中継器との違いについて
Wi-Fi電波が届く範囲を広げるという意味では、従来の中継器とメッシュWi-Fiの役割が一部重なっていることに間違いはありません。しかし中継器はあくまでもWi-Fi電波が届く範囲を広げることのみに特化したツールであり、システムそのものの安定性や接続の手軽さなどはメッシュWi-Fi固有の強みと言えそうです。
メッシュWi-Fi | 中継器 | |
---|---|---|
自動修復 | 1台が不調でも残りのサテライトでメッシュネットワークを構築できる | 不調になれば電波は届かなくなる |
接続先 | 自動で最適なWi-Fiポイントに接続 | 場合によっては親機に接続されることもある |
ルーターへの負荷 | メッシュネットワーク全体で分散 | 親機(ルーター)に集中 |
対応範囲 | 広範囲 | 中継器周辺 |
価格 | 高価 | 安価 |
メッシュWi-Fiシステムと中継器の主な違いを表にしてみました。中継器とはルーターからのWi-Fi電波を弱くなる前にキャッチし再発信してくれるデバイスのため、家中のWi-Fi機器による負荷が1台のルーターに集中してしまう構図は変わりません。その点メッシュWi-Fiは全てのサテライト機が親機と同様のルーターとして振る舞ってくれるため、負荷の分散という点においても優れたシステムと言えそうです。
また、中継器を使用すると中継器固有のSSIDに接続しなければならずメッシュネットワーク全体でSSIDを共有しているメッシュWi-Fiに比べて面倒だ、という意見も見受けられますが、ほとんどの中継器は親機のSSIDを引き継ぐことが可能です。ただし、ルーターと中継器間で同じSSIDを共有している場合、上記の表のように親機から中継器に上手く切り替わらず中継器の方が近くにあるのになぜか親機と繋がっているというシーンもよく見かけます。また、この場合SSIDが共通のため実際のところ親機と中継器どちらに繋がっているのかを判断しにくいという問題も発生します。
そういった問題に対処するために中継器には固有のSSIDを設定することも可能となっています。なので「メッシュWi-Fiと違って中継器はSSIDの切替が必要だから面倒だ」という認識は微妙に間違っていることには注意が必要です。
- メッシュWi-Fiはルーターに掛かる負荷を分散できる
- 親機・子機という考え方を無くしてくれるのがメッシュWi-Fi。中継機でもSSIDは共有できる
メッシュWi-Fiのメリット・デメリットをまとめると
ここまでメッシュWi-Fiの機能や特徴について述べてきましたが、筆者が考えるそのメリットとデメリットをまとめると以下の通り。
- 簡単な設定のみで手軽にWi-Fiエリアを拡大できる
- 移動しても自動で最適なWi-Fiポイントに接続される
- 自動修復によるネットワークの安定性
- 価格が高い
- 有線LANポートが少ない
- 規格が曖昧で混在しているため、同一メーカーの同一製品を揃えなければならない(ことが多い)
メッシュWi-Fiを導入することの最も大きなメリットは、スマートフォンなどを持ちながら移動してアクセスポイントが切り替わったとしても切り替わったことを感じさせないような切替の早さと通信の安定性でしょう。ビジネスホテル等で目当てではない別の階の弱いWi-Fi電波を頻繁に拾ってしまってイライラした経験がある方も多いかと思いますが、メッシュWi-Fiを導入すればそういったストレスからも解放されるのです。
しかし導入には思っている以上に費用がかかる点が最も大きなデメリット。コストパフォーマンスに優れていると評判のTP-Link Deco M4も2ユニットで1万円以上はしますので、エリア拡大の手軽さがウリとは言いつつも3つ、4つと購入するにはそれなりに覚悟が必要な価格設定です。
また、メッシュWi-Fiルーターは各メーカーの各ブランドごとに微妙に規格が異なっていることが多く、メーカーやブランドを混在させてメッシュネットワークを構成することが難しいというのも厄介な点。一応2018年の時点で、異なるベンダーのWi-Fiルーター間でもメッシュネットワークを構築できる製品を認証する「Wi-Fi CERTIFIED EasyMesh」というプログラムが発表されていますが、まだ浸透しきっていないのが現状。
NETGEARのEX8000など1つ導入するだけで他社製ルーターともメッシュネットワークを構築できるとしているデバイスもありますが、数は少ないです。RTシリーズとLyraシリーズという2つのルーターのブランドを展開しているASUSは、AiMeshという技術によって少なくともASUS製品内での互換性は確保していますが、他社との互換性は無し。
今後メッシュWi-Fiがさらに普及するためには、他社との互換性がカギになってくることは間違いないでしょう。
どんな人にオススメできる?
メッシュWi-Fiの仕組みと特徴、メリットとデメリットがわかったところで、いったいどんな人がメッシュWi-Fiを導入すべきなのか?について考えてみます。
これについては何も難しいことはなく、家が広くWi-Fiの電波の弱さに悩まされている人でしょう。特にスマートフォンやタブレット、ゲーム機、PC、TVなどWi-Fiに接続する機器を多く所有しており、お風呂やトイレなどでもそれらのデバイスを快適に使いたいのであればメッシュWi-Fiを導入するメリットを十分に受けられると思います。
逆に1Kの部屋で一人暮らしをしている場合などは言うまでも無く導入のメリットは薄いと言えます。また、PCやゲーム機など有線LANで接続したい機器を多く所有している場合やチャンネルや帯域などを細かくチェックして設定したい場合も、それらを自動でやってくれることがメッシュWi-Fiのメリットである以上導入は慎重になった方がいいでしょう。
- 部屋が広い、または多いため中継機の導入を検討している(もしくは既に導入済み)
- Wi-Fiに接続するデバイスが多い
- トイレやお風呂、2階などどこでもWi-Fiに接続したい
- 何となく試してみたい
まとめ
以上、メッシュWi-Fiの仕組みと特徴やメリット・デメリット、導入についての解説でした。
筆者としてもメッシュWi-Fiは非常に興味のあるシステムなのですが、そのメリットを享受できる人は意外と多くないことがわかります。導入に興味を持っている人は、自身のライフスタイルに合わせて適切な判断をするのが賢明です。
独自規格や価格の問題は、これからメッシュWi-Fiが浸透していくことで徐々に解消されていくでしょう。その頃には導入に値するような家で生活していたいですね。
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