XROUNDの新型完全ワイヤレスイヤホン、VOCAのレビューをお届けする。
XROUND VOCAは、昨年同時期にクラウドファンディングが実施されたFORGE NC同様ノイズキャンセリングに対応した完全ワイヤレスイヤホン。
LDACコーデックのサポートによりワイヤレスながらハイレゾ相当の音質で音楽を楽しめるほか、マイクのクオリティが向上したことで通話や動画配信、言語学習など守備範囲が大幅に広がっている。
本記事では、XROUND VOCAを実際に使用してわかった音質やノイズキャンセリングのクオリティ、マイク品質、バッテリー持ちなどを詳細に評価しレビューする。
XROUND VOCAは、12月8日よりMakuakeにてクラウドファンディングおよび先行予約販売を開始する予定。
製品提供:XROUNDオーディオ
結論:XROUND VOCAのよい点とイマイチな点
最初に結論から。XROUND VOCAを使って感じたよい点とイマイチな点を簡潔にまとめてみたので参考にしてみてほしい。
デザイン:アシンメトリーなケースがCOOL
XROUND VOCAのケースとイヤホンそれぞれの外観をチェックしていこう。
Makuakeにて取り扱われているXROUND VOCAのカラーは、ブラック1色のみ。先行して販売されている海外でもほかのカラーバリエーションは用意されていないようだ。
XROUNDのブランドロゴを思わせる、ブラックとゴールドの2色を組み合わせたケースデザインが特徴。
左側にのみゴールドのラインが走るアシンメトリーなデザインは、シンプルながらスタイリッシュで高級感がある。
ケース自体の素材はプラスチックで、表面はマットな仕上がり。サラサラとしていて手触りはよい一方、指紋はやや付きやすいと感じる。
ケースの天面に周囲とほぼ同色でXROUNDのロゴが入っている点もユニーク。
パッと見ただけでは気が付きにくく、ケースを傾けて光の反射が変わったときにふと目に入るような設計になっている。
当サイトではこれまで、イヤホンに限らず「ロゴが目立ちすぎるデザインはダサい」と主張し続けてきたが、VOCAのようなさりげなく溶け込ませる手法は洒落ていて気に入っている。
もう1つ面白いと感じたポイントがあり、それはケースが上下左右をグルっと囲むように面取りされフラットになっていること。
意図してなのかどうかは不明だが、この形状によりVOCAは上下左右どの面を接地させてもケース単体で自立できる。
完全ワイヤレスイヤホンのケースは何となく自立させた方がスマートに見えると考えているので、地味ながら気に入っているポイントだ。
フィット感
VOCAのケースを開いた様子がこちら。
イヤホンの周囲には十分なスペースがあるので、しっかりと指をかけてスムーズに出し入れできる。
ただし、各イヤホンは外側を向くように配置されているため、取り出してから耳に装着するまでに手の中で1度回転させなければならない点には注意が必要だ。
イヤホン自体は、AirPods Proで見慣れたスティックタイプ。カラーはケースと同じくブラックとゴールドでまとめられている。
軸部分が斜めにカットされたような形状を採用しているほか、ケース同様に角度を変えると見えるロゴが入っていたり所々にゴールドのパーツがあしらわれていたりなど、デザイン性はかなり高く見た目だけでもかなりの満足感だ。
ケース | イヤホン | |
---|---|---|
サイズ | 50.1 x 50.2 x 27.7mm | 19.9 x 21.6 x 18.7mm |
重量 | 43.4g | 5.5g |
VOCAを実際に装着してみた様子がこちら。
軸部分は比較的短めに設計されているので、周囲から見たときの違和感は抑えられている印象。イヤーピース手前の丸く膨らんだ部分が耳にスポッとハマるので、グリグリと押し込まなくても自然と固定できる。
イヤーピースは最初から取り付けられているモノを含めてコンフォートタイプが4サイズ、低音強化のブームタイプが3サイズ用意されているため、装着感を細かい部分まで追求可能。
軽いランニングや筋トレ程度では落ちそうになる心配もなく、IP55の防水防塵にも対応しているので、トレーニングのお供としても活用できそうだ。
音質:粗削りだが大迫力
XROUND VOCAは、SBC・AAC・LDAC・LC3の4つのコーデックに対応している。LDACのサポートにより、ワイヤレスながら正式に「ハイレゾオーディオ」も楽しめるようになった。
- QLC3 コーデックとは?
- A
Bluetooth LE Audioに合わせて登場した新コーデック。現在のSBCのポジションに近い、LE Audioにおける必須コーデックです。
SBCの約半分のビットレートで同等の音質を実現できると謳われています。
LDACコーデックを利用する場合は、専用のMyTuneアプリからLDACを有効にする。「今どのコーデックで接続されているのか?」を確かめるのに開発者オプションを利用していた方もいるかと思うが、VOCAとMyTuneアプリであればその手間は不要だ。
コーデックがLDACの状態でAmazon Music UnlimitedからUltra HD対応の楽曲を再生すると、VOCAからは24bit / 96KHzで出力されていることが確認できる。
実際に聴いてみて感じたVOCAの音質は、一言で述べると「大迫力」。
音の分離がキメ細かくLDACらしい圧倒的な情報量も感じられる。低音、特にドラムのドコドコ鳴る音が強めで空間を感じられる一方、ボーカルはその空間のなかでやや奥まって感じるときがあった。
しかし、低音やボーカルの強弱は特に問題にならない。MyTuneアプリを利用すればイコライザーを自由にカスタマイズできるからだ。
イコライザー
アプリを利用すると、高音・中音・低音を7つの音域に分割し、各音域を自在に調節できる。カスタマイズしたイコライザーは複数保存できるので、曲のジャンルに応じて切り替えも可能だ。
筆者のように低音が強すぎると感じた場合は低音を抑えればよいし、中音・高音も同様。
「おすすめ」「ボーカルを際立たせる」「ゆったりとした音楽」などのわかりやすいプリセットも用意されているので、筆者のように何をどれだけ動かせばいいのかイマイチわかってない方でも簡単に理想の音に近づけられる。
実際、「ボーカルを際立たせる」に設定するとデフォルトよりもバンドサウンドとボイスの距離間がハッキリとして、より自分にとってわかりやすく親しみやすい音に変化した。
TailorID 2.0
FORGE NCでも利用できたTailorID(テーラーアイディー)は、VOCAではバージョンアップしたTailorID 2.0として対応している。
同機能は、聴覚テストを行ったうえでユーザーの耳に最適な音質を自動的に導き出してくれるというもの。
アプリ内で実施される聴覚テストは、初代同様どの程度の高さ・音量の音なら聞き取れるのかを測定するかなり本格的な内容だった。
聴覚テストの結果はじき出されたイコライザー設定も保存できるので、いつでも呼び出して適用できる。
XROUND Lite サラウンド
VOCAは、XROUND独自のサラウンド機能である「XROUND Lite サラウンド」にも対応している。
実際に適用して音楽を再生してみたが、正直言って効きはイマイチ。確かにサラウンドっぽい広がりは感じるがちょっと中途半端で、level1・level2と2段階の調節も試してみるものの個人的にはしっくりこない。
あって困る機能ではないので選択肢が多いという点では評価できるが、積極的に使うことはなさそう。LDACで接続しているときには適用できないというのも、仕方ない部分ではあるが使いにくいポイントだった。
通話で真価を発揮
XROUND VOCAを使用していて個人的に最も気に入ったのは、通話のクオリティだ。
風切り音を防止するマイクや「Voice Chamber」と呼ばれる独自の音声ノイズ低減アルゴリズムが搭載されており、雑音の多い場所でもクリアな通話を実現している。
実際、ファンが回転するPCの近くや小型扇風機のすぐ隣でVOCAを使用して通話をしてみたところ、相手にはほとんどノイズが伝わっていなかった。
「Voice Chamber」によるノイズ低減効果を検証したXROUND公式の動画を掲載するので、ぜひその効果をチェックしてみてほしい。
MyTuneアプリには通話品質をチェックする機能も用意されており、VOCAを通したユーザーの声を録音可能。
動画のように交通量のやや多い屋外でも気になるほどのノイズはキャッチされなかったので、場所を問わず気軽に着信に応答できる。
また、強力なノイズキャンセリングにより通話中の自分の声が聞き取りにくくなるのを防止する「サイドトーン」機能も、アプリから強弱を自由に調節できた。
あらかじめペアリングした端末であれば、ケースを開けるだけで着信に応答できるほか、通話中にはワンタッチでマイクをミュートする機能も利用可能。
VOCAの通話クオリティは、日常的な通話だけではなくオンラインの会議や大学の講義などビジネスや学習といった幅広いシーンに高いレベルで通用する。
ノイズコントロール
XROUND VOCAは、ノイズキャンセリングと外音取り込みに対応している。
- ノイズキャンセリング:十分強力で、GalaxyやHUAWEIなどの上位モデルを比較対象としても場違いではないレベル。VOCAより強いノイズキャンセリングを利用できる完全ワイヤレスイヤホンはあるものの、シーンごとのレベル調節や柔軟な手動調節などはVOCAならではの強み。
- 外音取り込み:全体的に控えめだが機械っぽさが少なく自然。取り込み強化を有効にするとノイズが多くなるので、控えめなまま使うのがおすすめ。
ノイズキャンセリング:強力かつ使いやすい
VOCAのノイズキャンセリングは、利用するシーンに合わせて
- 快適(ノイキャン効果を保ちながら圧迫感を軽減)
- 屋外(中音・低音域への効果を強化し車の走行音を低減)
- 屋内(エアコンや話し声を低減)
- 風切り音防止モード(風の音を低減)
の4パターンに設定できる。
実際、自宅や駅の待合室で屋内の設定にしてみたところ、エアコンの音は完全に聞こえなくなり、周囲のザワザワ感はかなり遠のいた。
車通りの多い道路沿いで屋外モードを適用すると、車の走行音は完全には消えないもののほとんど気にならない。近づいてくる車に気が付かない恐れがあるので、外を歩いているときには絶対に使ってはいけないレベルの効果だ。
また、VOCAは「適応型アクティブノイズキャンセリング」と呼ばれる機能にも対応しており、同機能を有効にすると周囲の騒音レベルに応じて最適なノイズキャンセル強度に自動で調節できる。
オフにした場合は、アプリ上に表示されるメーターをスワイプしてレベルを0~20までの21段階で調節可能。
細かな調節はFROGE NCから利用できる機能で、調節範囲が細かすぎるため個人的にはあまり好きではなかった。VOCAでは「適応型アクティブノイズキャンセリング」が利用できるので、もっぱらそちらをメインに使っている。
外音取り込み:控えめだが自然
VOCAの外部音取り込みには、ノイズキャンセリング同様に複数のモードが用意されている。
- 全ての外部音を取り込む:環境音・話し声をバランスよく取り込む
- 話し声を取り込む:人の話し声にフォーカス
- 環境音を取り込む:環境音にフォーカス
いずれのモードに設定しても取り込まれる音声は非常に自然で、音が割れたり機械的でガサガサな質感になったりといったことはない。
ただし、取り込まれる音量もやや小さいので、イヤホンをしていない状態よりも大きく音を取り込むのはやや苦手。
ノイズキャンセリングと同様に外部音の取り込みレベルの21段階で調節できるほか、「外部音取り込みを強化」を有効にするとさらに強力にしたうえで21段階の調節が可能だ。
強化を有効にしたうえで取り込みレベルを10以上にすると、イヤホンをしていない状態よりもかなり大きめの音を取りこめる。
その反面、ノイズもかなり大きくなってしまうので、クオリティを重視してボリュームを諦めるか、ボリュームを重視してノイズを受け入れるか悩ましいところだ。
専用アプリ:多機能かつ作り込みもハイレベル
ここまでのレビューからわかるように、XROUND VOCAの利便性・機能性の高さは、多機能かつしっかりと作りこまれたMyTuneアプリがあってこそ。
同アプリにはまだ紹介しきれていない機能がいくつかあるので、以下でザックリと解説する。
タッチ操作のカスタマイズ
完全ワイヤレスイヤホンの定番機能であるタッチ操作のカスタマイズには、もちろん対応。
機能を割り当てられる操作は以下の4つだ。
- 1回タップ
- 2回タップ
- 3回タップ
- 2秒長押し
各操作には以下の機能を選んで割り当てられる。左耳・右耳それぞれに機能を設定できるので、左右合計で8個の機能を使い分けられる計算だ。
- なし
- 前の曲
- 次の曲
- 音量+
- 音量-
- 音声アシスタント
- サラウンドサウンドに切り替え(ノイズキャンセリング・外部音取り込み・オフ)
- 再生 / 一時停止
個人的には、「なし」の選択肢があるのが嬉しい。
誤タップの可能性がある1回タップに「なし」を割り当てると、イヤホンの着脱がスムーズで非常に快適だった。
装着検知のオン・オフ
VOCAは、耳から外すと曲を一時停止し装着すると再生する装着検知機能にも対応している。
MyTuneアプリ右上の歯車アイコンから「装着検知機能」をONにすると利用可能。装着検知は対応しているイヤホン・していないイヤホンどちらも多いが、任意で切り替えられるモデルはあまり多くないので特徴的なポイントでもある。
ちなみに、筆者は音楽の再生・停止はスマートウォッチを利用することが多いので、装着検知はOffにしている。
マルチポイント
マルチポイントに対応しているのも、VOCAの特徴。
使用するにはMyTuneアプリを開き、右上の歯車アイコンをタップして「マルチポイント接続」へと進む必要がある。
バッテリー残量を数値で見たい
1つだけMyTuneアプリの不満点も紹介しておこう。
同アプリで左上のハンバーガーメニューを開くと、左右のイヤホンおよびケースの画像とバッテリー残量が表示される。
しかし、表示されるバッテリー残量はアイコン表示のみ。4段階でしか残量が把握できないので、今どのくらいバッテリーが残っているのかを具体的に把握するのはやや難しい。
せっかくアプリ内でバッテリーを表示するのであれば、アイコンではなく%で表示してくれるとより便利に使えそうだと感じた。
バッテリー:めっちゃ長持ち
XROUND VOCAはノイズキャンセリングオフの状態で約9時間使用できると謳われている。
実際にノイズキャンセリングオン・オフ両方の状態でVOCAを使用し、バッテリーがゼロになるまでの時間を計測して電池持ちを検証した。
- 接続デバイス:Galaxy Z Flip4
- 使用アプリ:Amazon Music
- コーデック:LDAC(再生する曲は全てUltra HD)
経過時間 | ノイズキャンセリング:オン | ノイズキャンセリング:オフ |
---|---|---|
0分 | 100% | 100% |
1時間 | 84% | 90% |
2時間 | 73% | 82% |
3時間 | 58% | 75% |
4時間 | 42% | 69% |
5時間 | 32% | 60% |
6時間 | 15% | 49% |
7時間 | 0% | 31% |
8時間 | – | 22% |
9時間 | – | 10% |
結果は表の通りノイズキャンセリングオンの場合は約7時間、オフの場合は約9時間以上。
ノイズキャンセリングを有効にしていても最低6時間は持続するので、長時間の移動の際も安心感がある。
ワイヤレス充電に対応
VOCAのバッテリーケースは、底面にUSB Type-Cポートを搭載している。
また、Qi規格のワイヤレス充電もサポートしているので、互換性のあるワイヤレス充電器があれば置くだけでも充電できる。
Galaxyスマホに搭載されている、ワイヤレスバッテリー共有機能で充電できることも確認済みだ。
iPhone / Androidで使える?
本記事ではXROUND VOCAをAndroidスマホのGalaxyと組み合わせて使用しているが、読者のなかにはiPhoneユーザーの方も多いだろう。
VOCAはiPhone・Android問わず使用できるので安心してほしい。
Bluetoothで接続してイヤホンとして使えるというだけではなく、MyTuneアプリもiOS・Android両方のストアに掲載されている。
- iOS用:AppStore
- Android用:Google Play
iOS・Androidそれぞれでアプリを開いてみた様子がこちら。アプリの性能や機能にOS間の差はないと考えていい。
唯一異なる点としては、AndroidスマホだとLDACで接続できる点。ハイレゾ音源をスペックを満たしたうえで楽しみたいのであれば、LDAC対応の音楽プレーヤーやAndroidスマホとの組み合わせがおすすめだ。
まとめ:アプリで化ける守備範囲の広い完全ワイヤレスイヤホン
以上、XROUND VOCAのレビューをお届けした。
音質やバッテリー持ちなど基本性能が高いのはもちろん、MyTuneアプリがしっかりと作りこまれており、より多くの機能を高いレベルで扱えるように仕上げられている。
特に通話の品質は優れており、オンライン会議やテレワークなどのビジネスシーンにもおすすめだ。
XROUND VOCAは、12月8日から1月15日までMakuakeにて応援購入を受け付けている。応援購入では、一般販売予定価格よりもお得にゲットできるので、興味があればぜひチェックしてみてほしい。
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