サムスンの新型完全ワイヤレスイヤホン、Galaxy Buds3 Proのレビューをお届けする。
Galaxy Buds3 Proは2024年7月のGalaxy Unpackedで発表された最新のフラッグシップイヤホンであり、2022年に登場したGalaxy Buds2 Proの後継にあたるモデル。
本記事では、その特徴や性能、そして実際の使用感について詳しくレビューする。
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結論:サウンド体験を重視の方に最適、利便性重視の方は慎重に検討を
まず最初に、Galaxy Buds3 Proをしばらく使ってみて感じたことを簡潔にまとめる。
音質は非常によい。低音に若干ブーストがかかっているのか高音域が多少弱く感じるもののバランスは悪くなく、程よく響く低音とハリのあるボーカルを楽しめる。情報量や奥行きなどはGalaxy Buds2 Proよりも明らかに向上しており、聴いていて心地よいし何よりも楽しい。
一方で、気になるポイントもかなり多い。
Galaxy Budsシリーズに限らずさまざまな完全ワイヤレスイヤホンで同様のケチを付けてきたが、ケースにイヤホンを収納するときの向きが外向きなので、取り出すときにも収納するときにも回転させなきゃいけないのは地味ながら手間がかかる。
また、デザイン自体も個人的にはややチープというかおもちゃっぽい印象を受けた。注目機能である「ブレードライト」も手動点灯しかできず、要・不要という話以前に使う気になれないというのが正直な感想だ。
Galaxy Buds3 Pro、片耳だけ接続されてないことがまあまあな頻度であってモヤモヤする https://t.co/SEYnZF2YNu
— ひがし (@pghigashi) September 20, 2024
さらに、これは環境にもよるのかもしれないが接続が途切れるシーンが多い。今まで数多くのGalaxy Budsシリーズを使い続けてきたが、Buds3 Proがぶっちぎりで不安定。筆者の環境では、通話時に接続が途切れることが非常に多く、とうとう通話には使わなくなってしまった。
さらにさらに、イヤーピースが破れやすい。世界的にも話題になり出荷遅延の原因の1つと噂されていた繊細なイヤーピースだが、やはり扱いには気を遣う。筆者は何とか破らずに交換できたが破損してしまったという報告も多く、できれば2度と交換したくない。
デザインと使い勝手:ホワイト推奨。ゲーミング風の安っぽさが気になる
Galaxy Buds3 Proのデザインは、従来のGalaxy Budsシリーズのデザインから大きく変更されている。
Galaxy Buds Liveから採用され続けてきた宝石箱モチーフのケースではなくなり、イヤホン自体も従来の蕾型からAirPods風の軸のあるタイプになっている。
個人的には四角いケースや丸っこいイヤホンは好きだったので、Galaxy Buds3 Proで「どこかで見たことある形状」になったことは少々残念。
Galaxy Budsシリーズ向けに設計されたカバーがまとめて使えなくなってしまったことももったいないと思うが、いつまでも同じ見た目を使い回し続けるのもそれはそれで段々辛くなってくるはずなのでキッパリと方向転換するのは英断だったのかもしれない。
カラーバリエーションはシルバーとホワイトの2色で、今回購入したのは見ての通りシルバー。
商品ページやプレスリリースの画像を見たときは「シルバー一択!」と考えていたのだが、実物が届き開封しいざ触れてみると段々「うーん……🤔」という感情に。チープというか絶妙におもちゃっぽい質感だと感じてしまった。
画像だとやっぱりカッコよく見えるときもあるので、表面の触り心地や透明な蓋、ピカピカ光るゲーミング感などが原因かもしれない。今からもう1度Galaxy Buds3 Proを購入するのであれば、たぶん無難なホワイトを選択するだろう。
ちなみに、ケース内側の左には青、右にはオレンジのワンポイントがある。これはGalaxy Watch7の純正バンドにも共通しているデザインだ。
イヤホンはケース内に立てた状態で収納するスタイル。左右のイヤホンが外側を向いた状態で収納されるので、取り出してから耳に装着する前に1度回転させなければならないのが地味だが手間に感じる。
収納するときも同様に一旦イヤホンを外側に向ける必要がある。既にこのスタイルの充電ケースが多く世に出回っているうえGalaxy Buds3 Proはわざわざ従来の形状を変更している立場でありながら、こういった細かい使い勝手に配慮されていないのは正直言って不満だ。
イヤホン本体は角ばったシャープなデザイン。
軸部分にはブレードライトと呼ばれるライトが搭載されているほか、感圧センサーも搭載されているのでつまむことで曲のコントロールやノイズキャンセリングなどを操作できる。
- シングルピンチ:再生/一時停止
- ダブルピンチ:次の曲
- トリプルピンチ:前の曲
- スワイプ:ボリューム調節
- 長押し:ノイズコントロール・Bixby・通訳・マインドフルネス・Spotifyから1つ選択(左右に1つずつ割り当て可能)
絶対に使わなくなるブレードライト
Galaxy Buds3 Proの注目機能であり公式サイトでも結構な熱量で推されている機能が、軸部分に沿うように搭載されたブレードライトだ。
ペアリング時やイヤホンを収納したときにピカピカ光るほか、取り出したあと常に点灯させておく設定も用意されている。スタイリッシュに光る姿が「自分らしさを表現できる」とのことだが、あまりカッコイイとは思えず……。
完全に個人の好みであることを前置きしたうえであえて言うと、光らなくていい物をわざわざ光らせてかっこよくなるパターンがあまりないと思っている。そのため、カラフルピカピカなゲーミングデバイス全般も正直あまり好きではない。
イヤホンに至っては装着してしまうと光っているかどうかもよくわからないので、なおさら「これ必要か?」という気持ちが勝ってしまうのでどうにも好きになれなかった。
さらに、このブレードライトはカッコイイと思ってくれるユーザーにも優しくない不親切な仕様なのが非常に気になる。
ペアリング時や収納時は自動的に点灯するのに対して、常に光らせるにはイヤホンを取り出したあと両イヤホンの軸を同時につまんで長押ししなければならない。ハッキリ言って面倒臭すぎる。
光る機能がウリであり魅力なのであれば、点灯のオン・オフくらいGalaxy Wearableから操作できるべきだろう。ただでさえ落とさないように気を遣いがちなイヤホンをケース片手に両方同時に長押しさせるなんて、機能を使わせる気があるとは到底思えない。
なお、点灯スタイルは点滅・フェードイン/フェードアウト・固定の3パターンが用意されており、このパターンはGalaxy Wearableから選択できる。
どう考えてもこの設定項目のなかに常時点灯のオン・オフも入れておくべき。そうしないと、ブレードライトは典型的な「最初だけ面白がって使う機能」でしかなくなり忘れ去られてしまうのがオチだ。
イヤーピースは取り扱いに気を遣う。装着感は良好
イヤホンを実際に装着してみた様子がこちら。
定番の形状だけあってフィット感はよく、外から見た様子にも違和感はない。ジムでも度々装着しているが、多少の運動程度では脱落する心配もなく安心して使用できている。
1つ注意が必要な点としては、イヤーピースがデリケートなこと。ECサイトや価格comなどのレビューを見ると交換時に破いてしまったという報告も多く、取り扱いには気を遣う。
実際に筆者も1度イヤーピースを交換しているが、確かにサクッと破れてしまいそうな脆さを感じた。Galaxy Buds2 Proのイヤーピースと並べてみても極端に薄いわけではないので、シンプルに耐久性が低いものと考えられる。
一応サムスン公式サイトにもイヤーチップの交換方法が掲載されているが、要約すると「爪を使わず優しく扱ってね」と書いてあるだけなのであまり役には立たない。
イヤーピースを交換する場合は必要以上に慎重になるくらいが丁度よいだろう。
音質とノイズキャンセリング:圧倒的なサウンド体験
ここまでネガティブな評価が続いていたが、ここからはやっとGalaxy Buds3 Proを褒めることができる。本機最大の魅力は、間違いなく圧倒的な音質だ。
ボーカルがしっかりと前に出ていながら低音の音圧も強く、深く体に響くような音を楽しめる。各楽器やボーカルが乱雑に混ざることなく1音1音が丁寧に表現されており、クリアで気持ちのよいサウンドを体験できるような設計だった。
スマホのスピーカーでは感じ取れなかった音に気が付けるので、音楽だけではなく映画やアニメといった動画コンテンツの視聴にもピッタリだ。
360オーディオも引き続き搭載されており、Galaxy Wearableアプリから有効にするだけで音楽でも動画でもコンテンツの種類を問わずに立体的なサウンドとして楽しめる。
コーデックはSBCとAACのほか、One UI 4以上を搭載するスマホであれば24bit/48kHzのSSC(Samsung Seamless Codec)、One UI 6.1.1以上のスマホとの組み合わせであれば24bit/96kHzのSSC-UHQで接続できる。
実質ハイレゾ相当の音質を体験可能だが、高音質コーデックでの接続がGalaxyスマホに限定されている点はメリットでもありデメリットでもある。
Galaxyスマホを購入したユーザーにイヤホンを使わせるための囲い込み戦略であることは言うまでもないが、Galaxyのシェアが高くない日本では囲い込みというよりも締め出しに近く、他社のAndroidスマホのユーザーがGalaxy Budsを選ばない理由にもなってしまっているのはやや気になるポイントだ。
通話時の音声も非常にクリアであり、まるですぐそばで話をしているかのようなクオリティ。日常的に使っていきたいほどなのだが、筆者の環境だとなぜか通話をすると片側のイヤホンのみ途切れる現象が頻発してしまった。
通話の度に再度接続しなおすという手順を何度か踏んでいるうちに段々と使うのが億劫になってしまったので、結局今はHUAWEI FreeClipを通話用に使用している。
自然で高精度なノイズキャンセリングと外音取り込みの実力
ノイズキャンセリングと外音取り込みもシリーズでトップの高性能。ノイズキャンセリングを有効にした瞬間、周囲の音がスッと減退し一気に静寂に包まれる。ホワイトノイズも全くと言っていいほど感じられなかった。
イヤーピースのサイズを適切にあわせれば物理的な遮音性も高いのでキーボードのタイピング音のような機械的な音もカットしやすく、音楽を流さないデジタル耳栓的な使い方も可能だ。
Galaxy Wearableアプリを使用すれば、ノイズキャンセリングのレベルも柔軟に調節できる。個人的には最大以外に設定するシーンはないが、強力なノイズキャンセリングに圧迫感を感じやすい方でも安心して使いやすい設計だろう。
外音取り込みも非常に自然で聞き取りやすく、駅のアナウンスはもちろん会話も問題ないクオリティだ。ユーザーの声を認識して自動的に外音取り込みを有効にする機能も用意されているので、咄嗟の会話に一切の操作なしで対応できるのも使い勝手のよいポイントだった。
AIはまだ道半ば
Galaxy Buds3 Proの特徴的なポイントと言えば、Galaxy AIだ。昨今のAIブームに乗っかる形でGalaxyスマホで利用できるようになったGalaxy AIだが、ついにイヤホンにも搭載されることとなった。
具体的に何ができるのかと言うと、リアルタイムの翻訳だ。Galaxy Buds3 Proで聴いた声を文字起こしして翻訳できるほか、リアルタイムで通訳を聞くこともできる。
今回は英語の動画をGalaxy Buds3 Proを通して聴くことで翻訳の精度や速度を簡単に検証してみた。
利用方法は簡単で、イヤホンを装着した状態でクイックパネルを開き通訳ボタンをタップし、画面上のボタンをタップするかイヤホンの軸をつまむだけ。
すると流れてる音声が認識され、自動的に日本語に翻訳される。今回試してみた英語の音声認識の精度は非常に高く正確だったが、日本語訳はいかにも直訳といったクオリティで何を言っているのか一旦冷静に考える必要がありそうだった。
また、通訳が再生されるタイミングやスピードもあまり早いとは言えず、「Galaxy Buds3 Proがあれば外国人ともスムーズに会話できる」とまではいかない。互いに気を遣ってゆっくり発音しつつ画面を見ながら……というのが現実的なところだろう。
そもそも、翻訳やリアルタイムの通訳機能はGalaxy AI対応のスマホ単体でも利用できる。Galaxy Buds3 Proを介す必要がほとんどないので「AIアピールのための機能」感が拭えず、今後のクオリティ向上や機能追加などに期待したいところだ。
バッテリー持ちを検証
Galaxy Buds3 Proの電池持ちについても検証してみた。
スペックシートによると、Galaxy Buds3 Proはノイズキャンセリングオフだと約7時間、ノイズキャンセリングオンだと6時間連続で音楽再生が可能だという。
実際に、ノイズキャンセリングオンの状態とオフの状態でフル充電からバッテリーが切れるまで何時間かかるかを検証した結果が以下の通り。ペアリングしたスマホはGalaxy S23 Ultra、音楽再生に使用したアプリはAmazon Musicだ。
ノイズキャンセリング – オン | ノイズキャンセリング – オフ | |
---|---|---|
スペック上のバッテリー持続時間 | 6時間 | 7時間 |
実際のバッテリー持続時間 | 5時間30分 | 8時間 |
ANC ONの場合は約30分短く、OFFの場合は約1時間スペックよりも長く利用できた。
どちらもバッテリー切れを気にせず安心して使用できる水準であり、飛行機や新幹線での長時間の移動時にも使いやすい。
ケースはワイヤレス充電にも対応し、従来通りGalaxyスマホのワイヤレスバッテリー共有でも充電できるので、スマホ用の充電器さえあれば外出先でも気軽に充電可能だ。
どちらがおすすめ?:Galaxy Buds3との違いを比較
最後に、Galaxy Buds3 Proと同時に登場したGalaxy Buds3との違いを簡単に比較してみる。実機は使用していないのであくまでもスペックだけの比較だ。
Galaxy Buds3 Pro | Galaxy Buds3 | |
---|---|---|
サイズ | イヤホン:18.1 x 19.8 x 33.2mm ケース:48.7 x 58.9 x 24.4mm | イヤホン:18.1 x 20.4 x 31.9mm ケース:48.7 x 58.9 x 24.4mm |
重量 | イヤホン:5.4g ケース:46.5g | イヤホン:4.7g ケース:46.5g |
Bluetoothバージョン | Bluetooth 5.4 | Bluetooth 5.4 |
対応コーデック | AAC / SBC / SSC / SSC-UHQ | AAC / SBC / SSC / SSC-UHQ |
イヤホンタイプ | カナル型 | インナーイヤー型 |
スピーカー | 2Wayスピーカー デュアルアンプ | 1Wayスピーカー シングルアンプ |
音声検出 | 対応 | 非対応 |
ブレードライト | 搭載 | 非搭載 |
電池持続時間 | ANCオフ:最大約7時間 ANCオン:最大約6時間 | ANCオフ:最大約6時間 ANCオン:最大約5時間 |
充電方法 | USB Type-Cポート / ワイヤレス充電 | USB Type-Cポート / ワイヤレス充電 |
ANC(アクティブノイズキャンセリング) | 対応 | 対応 |
外音取り込み | 対応 | 対応 |
防水防塵 | IP57 | IP57 |
違いがある部分に赤ラインを引いてみた。コーデックが共通している一方でカナル型とインナーイヤー型の違いやスピーカーの違いから、音質やノイズキャンセリングの性能などはGalaxy Buds3 Proの方が上だと考えられる。
どちらがおすすめかという点については、自身で購入するならGalaxy Buds3 Proの方がおすすめだ。
というのも、Galaxy Budsシリーズはこれまでスマホの販売や各種キャンペーンなどさまざまなタイミングでプレゼントされてきているため。今後も似たような企画がある場合、対象となるのは1万円ほど安いGalaxy Buds3になる可能性が高く自腹で購入すると何となく損した気分になりやすい。
これまでイヤホンをバラ撒きまくってきたことで「Galaxyのイヤホンは買わずに貰うもの」という印象のユーザーも多いので、どうせならあまり配られなさそうな上位モデルを購入した方が気分よく使えるはずだ(3 Proがバラ撒かれたらゴメンナサイ)。
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