サムスンの新型完全ワイヤレスイヤホン、Galaxy Buds2 Proのレビューをお届けする。
Galaxy Buds2 Proは、2022年8月のGalaxy Unpackedで発表された新モデル。約1年半前に登場したGalaxy Buds Proを置き換える、新たなハイエンド完全ワイヤレスイヤホンとなる。
アクティブノイズキャンセリングや外音の取り込みといった定番の機能はもちろん搭載。独自コーデックのサポートにより新たに24ビットのHi-Fiサウンドにも対応したので、音質や電池持ちなど基本的な項目も本記事で詳細にレビューしていく。
▼動画でもレビューしているので、ザックリ聞き流したい方はぜひ。
結論:Galaxy Buds2 Proのよい点とイマイチな点
最初に結論から。Galaxy Buds2 Proを使って感じたよい点とイマイチな点を簡潔にまとめてみたので参考にしてみてほしい。
デザイン:超マットな重厚感のある質感に
Galaxy Buds2 Proのケースとイヤホンそれぞれの外観をチェックしていこう。
Galaxy Buds2 Proのカラーバリエーションは、グラファイト・ホワイト・ボラパープルの3色。今回は、ボラパープルを購入してみた。
パッと見は従来モデルから変化がなさそうなバッテリーケースだが、質感・手触りは大きく変更されている。
今まではつや消しのプラスチックらしい軽い質感だったが、Galaxy Buds2 Proではゴムやシリコンに近い手触りになっている。滑らかなうえわずかに柔らかさも感じられ、無意識に触っていたいほど心地よい。
この質感の違いは、ケースを閉じるときの音にも現れている。
Galaxy Buds LiveやGalaxy Buds Pro、Galaxy Buds2のケースは勢いよく閉じると「パンッ!」という高めの音が鳴るのだが、Galaxy Buds2 Proのケースは「パコン」という厚みのある音が響く。
わずかな違いだが、毎日のように触る完全ワイヤレスイヤホンだからこそ細かな部分からも質の高さが感じられるのは非常に嬉しい。もともと宝石箱をモチーフに設計されたケースなので、よりその雰囲気に近づいたと言えるだろう。
ケースを開けてみた様子がこちら。
内部も表面と同じくゴムともシリコンとも似たサラサラな手触り。イヤホンの周囲には指を掛けるスペースも十分にあるので、スムーズにイヤホンを取り出したり収納したりできる。
イヤホン本体は、全体がケースと同じパープルでまとめられている。
形状はGalaxy Buds Proを踏襲しているが、比較してみるとイヤーピース手前の膨らみが抑えられスリムになっていることがわかる。
また、マイクの位置や充電用の電子接点のポジションも変更。位置は異なるものの、外側に大型のマイクを搭載している点は変わらない。
ちなみに、ケースのサイズは従来モデルよりも高さのみ0.1mm小さく設計されているが、手に取って違いを感じ取れるほどではない。
ケース | イヤホン | |
---|---|---|
サイズ | 50.1 x 50.2 x 27.7mm | 19.9 x 21.6 x 18.7mm |
重量 | 43.4g | 5.5g |
Galaxy Budsシリーズ向けにはサードパーティからケースが販売されており、Galaxy Buds ProやGalaxy Buds2向けを謳うケースも、筆者が所有するものは全てGalaxy Buds2 Proに装着できた。
Galaxy Budsシリーズ用のおすすめケースについては、以下の記事を確認してみてほしい。
フィット感:薄型化により着脱がスムーズ
Galaxy Buds2 Proを装着してみた様子がこちら。イヤホンの大部分が耳にスッポリとフィットするので、第三者から見たときの違和感はかなり抑えられている部類ではないだろうか。
肝心のフィット感は、一言で言うと素晴らしい。イヤホンの形状が薄型化したためか、イヤーピースを押し込まなくてもイヤホンそのものが耳を塞ぐようにピッタリと収まる。
イヤホンをグリグリと動かしながらフィットするポジションを探す必要はほとんどなく、ほとんどはめ込むだけの印象に近い。オープンタイプのGalaxy Buds Liveほどではないものの、実測で片側約5.5gという軽量さも相まって、カナル型のGalaxy Budsシリーズのなかでは間違いなくトップクラスの付け心地だ。
頭を振ったりジャンプしたりランニングしたりと色々な動きを試してみたが、手を使わずに落とす方が大変なくらい安定感も優れている。
IPX7の防水にも対応しているので、ウォーキングやランニングのお供としても申し分ない仕上がりだ。
装着状態のテスト
Galaxy Wearableアプリから「イヤホンの装着状態のテスト」を利用できる点もGalaxy Buds2 Proの特徴だ。
テストを実行すると音楽が流れ、装着の向きやイヤーピースのサイズが合っていないと判断されると付け直しを促される。イヤホンをわざと浅く装着してテストしてみたところ位置を調節するようにアドバイスされたので、精度も実用的なレベルに達しているようだ。
音質:シリーズNo1、繊細ながら大迫力
Galaxy Buds2 Proは、従来モデルとは異なる独自コーデックのSSC(Samsung Seamless Codec)に対応している。
SSCで接続できるのはOneUI 4.0以降を搭載したGalaxyデバイスとペアリングした場合に限定されるが、シリーズとしては初めて24ビットのHi-Fiサウンドを再生できるようになった。
コーデックがSSCの状態でAmazon Music UnlimitedからUltra HD対応の楽曲を再生すると、Galaxy Buds2 Proからは24bit / 48KHzで出力されていることが確認できる。
実際にOne UI 4.1.1を搭載したGalaxy Z Flip4とペアリングし音質をチェックしてみたところ、Galaxy Buds2 Proの音質には「余裕」というワードがピッタリだと感じた。
まず最初に感じるのは、情報量の多さと解像度の高さ。曲を構成するあらゆる要素を、低音や高音といった括りにとどまらず楽器や音階などの粒子に細かく分解し、1粒1粒をじっくりと感じ取れる。
独自コーデックの恩恵もあってか歪みもほとんど感じられず、エコーやコーラス、ボーカルの息遣いのような音場感・空気感までライブ感たっぷりに体験可能だ。
音の傾向としてはやや低音域が強めで沈み込みが深く、安定した重心で全体を支えているイメージ。中高音域、特に中音域は低音域や高音域と比べるとと控えめな印象だが、物足りないとは感じない。
イコライザーのカスタマイズ
Galaxy Buds2 Proは、従来モデル同様アプリからイコライザーを選択できる。用意されているイコライザーは、デフォルトの標準のほか、低音ブースター・ソフト・ダイナミック・クリア・高音ブースターの6種類だ。
低音ブースター | ベースやドラムの音が標準よりも前に出てくる。元々低音は効いているため個人的には不要 |
---|---|
ソフト | 低音の厚みが増し高音のキラキラ感がやや失われる |
ダイナミック | 低音の量感がアップし高音もやや鋭くなる。解像感はやや落ちる |
クリア | ボーカル以外が一段と前に出るが高音がちょっと鋭い |
高音ブースター | ややシャリシャリ気味。うるさく感じる場合も |
標準以外のイコライザーを使ってみた簡単な感想がこちら。
筆者の場合、標準の音の完成度が非常に高いと考えているのでイコライザーの出番はほとんどなさそうだ。音質とイコライザーについては、ぜひご自身で納得のいく設定を見つけてみてほしい。
遅延:ゲームモードは効果ナシ?
Galaxy Buds2 Proもワイヤレスイヤホンである以上、多少の遅延がある。YouTubeやNetflixを見る程度であればほぼ気にならないが、FPSやリズム系のゲームではわずかだが音のズレを感じてしまう。
一応、Galaxy Wearableのラボ機能の1つにゲームモードがあるのだが、正直に言うとゲームモードを有効にしても遅延の改善効果はほとんど感じなかった。
ゲームだけではなく、オーディオテスターというアプリで音の遅延具合を目視でチェックしてみたが、ハッキリとした違いは感じられない。独自コーデックのSSCが優秀なのか、ゲームモードが中途半端なのか……。
360オーディオ
Galaxy Buds2 Proは、360オーディオにも対応している。360オーディオはいわゆる「空間オーディオ」的な機能であり、音に囲まれているような体験ができるというものだ。
使えるコンテンツには制限がなく、YouTubeの動画でも体験可能。もちろん、音楽のストリーミングサービスでも立体的なサウンドを楽しめるが、360オーディオを有効にした時点でやや反響が強めの音質にアレンジされるので、個人的には動画向きの機能だと感じる。
機能としては、動画を再生中のスマホを目の前に置いて右を向くと、スマホから遠い右のイヤホンの音が弱まりスマホに近い左のイヤホンの音が強調される。つまり、音に囲まれているというよりは発信源から同心円状に音が広がる形を再現している状態に近い。
頭の動きに追従する音の変化自体は非常にスムーズで違和感はない。しかし、没入感という点ではイマイチインパクトに欠けてしまったというのが正直な感想だ。
ノイズコントロール
Galaxy Buds2 Proは、ノイズキャンセリングと外音取り込みのほか、この2つを自動的に切り替える音声検出に対応している。
ノイズキャンセリングと外音取り込みは、Galaxy Buds2 Proをペアリングした状態でGalaxy Wearableアプリからオン・オフ可能だ。また、イヤホンのタッチ部分を長押ししても切り替えられる。
ノイズキャンセリング:歴代最優秀
Galaxy Buds2 Proのノイズキャンセリングは、Galaxy Buds Proと比較してキャンセル性能が約40%向上していると謳われている。
実際に新幹線内で使用してみたところ、大幅にノイズをカットできていた。「ゴォー」という走行音は体感で7~8割程度は低減されており、周囲の人の話し声やアナウンスはほぼ聞こえないレベル。
自宅で使用すると、エアコンや扇風機、PCのファンの音などをしっかりとカットできる。気になるようなホワイトノイズもなく、精度も効果もシリーズで間違いなくトップのクオリティだ。
外音取り込み
周囲の音の取り込み機能もナチュラルで使いやすい。
音の取り込み機能は直近のGalaxy Buds2の時点でかなり改善されており、今作Galaxy Buds2 Proでもそのクオリティは健在。
金属音が刺さりやすかった旧モデルのような違和感はほぼなく、耳を塞いでいない状態と遜色ない音がイヤホンから流れてくる。
ちなみに、Galaxy Buds Proでは周囲の音の取り込みレベルを3段階で調節できたが、Galaxy Buds2 Proでは調節機能は用意されていないようだ。
音声検出が最高に便利
音声検出も、Galaxy Buds2 Proの魅力的な機能のひとつだ。
音声検出を有効にすると、Galaxy Buds2 Proを装着した状態で声を発した時に自動的に周囲の音の取り込みモードに移行し、さらに音楽のボリュームもグッと下げられる。
また、ユーザーの音声が約10秒(5・15秒に変更可能)検知されないと、ノイズキャンセリングモードに移行し音楽のボリュームも戻る。
つまり、いちいちイヤホンを外ししたりタッチ操作したりしなくても、声を出すだけで自動的に会話をしやすい状態に設定してくれるという機能だ。
音声検出の精度は高く、モードの移行も非常にシームレス。新幹線の車内販売でじゃがりこを買ったり、コンビニで会計したりするときに活用しているが、何か機能を使っているという感覚がないほど自然かつ無意識に使えるので個人的にはとても重宝している。
Galaxy Wearableアプリでできること・できないこと
Galaxy Buds2 Proは、従来モデル同様にGalaxy Wearableアプリからさまざまな設定を行える。
すべては紹介しきれないが、主要な機能は一通り試してみたので感想を共有する。
タッチ操作のカスタマイズ
Galaxy Buds2 Proにデフォルトで設定されているタッチ操作は以下の通り。
操作 | 機能 |
---|---|
シングルタップ | 曲を再生 / 一時停止 |
ダブルタップ | 次の曲を再生 |
トリプルタップ | 前の曲を再生 |
長押し | ノイズコントロールを切り替え |
カスタマイズできるのは上記のうち長押しのみで、左右にそれぞれ以下から機能を選択できる。
- ノイズコントロールの切り替え(ANC ⇔ 周囲の音)
- Bixby
- 音量調節(右:アップ 左:ダウン)
- Spotify
日本ではBixbyを使うシーンはほとんどないので、実質選択肢は3つ。音量調節についてはラボ機能からイヤホンの端のダブルタップにも割り当てられるので、さらに2つまで選択肢を絞れる。
なお、各タップや長押しは無効にもできる。筆者は再生と一時停止はGalaxy Watchに任せているのでシングルタップは無効にし、長押しには両耳ともノイズコントロールの切り替えを割り当てているので参考までに。
装着検出には非対応
完全ワイヤレスイヤホンの多くは、イヤホンを耳から外すと音楽を停止し付けると再生する機能に対応している。しかし、Galaxy Buds2 Proにこの機能は搭載されていない。
不便に思えるかもしれないが、装着を検出する機能は人と短時間だけ会話をするようなシーンでよく使う。前述の音声検出機能のあるGalaxy Buds2 Proでは困るシーンは少ないはずだ。
接続先のシームレスな切り替え
同じGalaxyアカウントでログインしているGalaxyデバイス同士であれば、自動的に接続先を切り替えることもできる。
例えば、Galaxy Z Flip4とGalaxy Buds2 Proをペアリングして音楽を聴いているとき、Galaxy Note20 UltraでYouTubeの動画を再生したとする。このとき、Galaxy Note20 Ultraで動画を再生した瞬間に接続先が切り替わり、動画の音声がGalaxy Buds2 Proから聞こえてくる。
非常に便利な機能である一方、スマホとタブレットぐらいしか展開されていない日本だとイマイチ活躍の機会が少ないのも事実。海外ではテレビも本機能に対応しているので、Galaxyエコシステムとしての完成度はより一層高いと言える。
ちなみに、複数のデバイスと同時に接続するマルチポイントには非対応なので勘違いしないように注意。
新機能:首ストレッチのリマインダー
Galaxy Buds2 Proは、新たに「首ストレッチのリマインダー」という機能に対応した。
頭が10分間前傾したままほとんど動いていないと、Galaxy Buds2 Proがその状態を検出して通知してくれるというもの。スマートウォッチによく搭載されている、座りすぎ通知機能の首バージョンと考えるとわかりやすい。
機能を利用するには、初回設定時のみ首を上げたり倒したりといった調節が必要。正直に言うと、あって困ることはないが特別便利に感じることもない、かなり微妙な機能に感じた。
電池持ち:安心して使える水準
Galaxy Buds2 Proの電池持ちについても検証してみた。
スペックシートによると、Galaxy Buds2 Proはノイズキャンセリングオフだと約8時間、ノイズキャンセリングオンだと5時間連続で音楽再生が可能だという。
実際に、ノイズキャンセリングオンの状態とオフの状態、それぞれどれくらいのペースで電池が消耗されていくかを検証した結果が以下の通り。ペアリングしたスマートフォンはGalaxy Z Flip4、音楽再生に使用したアプリはAmazon Musicだ。
経過時間 | ノイズキャンセリング – オン | ノイズキャンセリング – オフ |
---|---|---|
0分 | 100% | 100% |
1時間 | 84% | 90% |
2時間 | 68% | 79% |
3時間 | 49% | 60% |
4時間 | 30% | 51% |
5時間 | 11% | 39% |
5時間30分 | 0% | – |
6時間 | – | 26% |
7時間 | – | 11% |
8時間 | – | 4% |
検証結果は、ノイズキャンセリングを有効にすると約5時間30分、無効にすると約8時間。概ね公式情報通りといったところだ。
約5時間30分という電池持ちは、十分な効果のあるノイズキャンセリングを搭載した完全ワイヤレスイヤホンとしては、かなり健闘している方だろう。個人的にも、3~4時間の新幹線移動の間に充電を挟む必要がないため、Galaxy Buds2 Pro1台だけでも安心して出かけられる。
ワイヤレス充電にも対応
バッテリーケースは、背面のUSB Type-CポートのほかQi規格のワイヤレス充電にも対応している。
フラッグシップモデルのGalaxyスマートフォンに搭載されているワイヤレスバッテリー共有でも充電できるので、Galaxyユーザーであれば別途ケーブルを持ち歩く手間がかからない。
Galaxy Buds2 ProってiPhoneで使えるの?
- QGalaxy Buds2 ProはiPhoneで使える?
- A
ワイヤレスイヤホンとしては使える。ただし、Galaxy Wearableアプリはないので、機能のカスタマイズなどはできない。
当サイトでは、Galaxy Buds+以降全てのGalaxy Budsシリーズのレビュー記事・動画を公開している。
そのため、ときどきコメントや問い合わせから質問も寄せられるが、最も多い質問が「Galaxy BudsはiPhoneで使えるのか?」というもの。Galaxy Buds2 Proにおいても同様の質問があると思われるので、先に答えを置いておこう。
まず、iPhoneであろうとAndroidであろうと、WindowsでもmacOSでもワイヤレスイヤホンとしては問題なく使える。対応コーデックのなかにはAACも含まれているくらいだ。
ただし、iOS向けのGalaxy BudsアプリはGalaxy Buds+とGalaxy Buds Liveしかサポートしていない。つまり、Galaxy Buds2 Proのアプリから操作・設定する機能はiPhoneからは利用できない。
具体的には、音声検出やゲームモードなど各種機能のオン・オフ、タッチ操作のカスタマイズなど。一応、Android端末があれば、一度Galaxy Wearableアプリで好みの機能にカスタマイズしてiPhoneで使うという手法も取れなくはないが、言うまでもなく面倒だろう。
Galaxyファンだがあえて正直に言うと、iPhoneユーザーにGalaxy Budsシリーズはおすすめできない。
ほかのGalaxy Budsシリーズとの比較
筆者はこれまで、Galaxy Buds+・Galaxy Buds Live・Galaxy Buds Pro・Galaxy Buds2を使用してきている。各Galaxy Budsの実機も手元に残しているので、スペックはもちろん具体的な使用感の比較も可能だ。
歴代Galaxy Budsの比較は長くなってしまうので、以下の記事にて詳細にまとめている。購入モデルを迷っている方は、合わせて参考にしてみてほしい。
まとめ
以上、Galaxy Buds2 Proのレビューをお届けした。
注目すべきは、やはり独自の新コーデックSSC(Samsung Seamless Codec)の採用による音質の向上だ。ANCや装着感などもハッキリと違いが分かるほどブラッシュアップされており、初代以外のシリーズ全モデルを使用したうえで歴代最高傑作といっていい仕上がりだと思う。
その分、価格も3万円超えとややお高め。しかし、Galaxy Buds2 Proのクオリティであればきっと価格以上の体験を提供してくれるはずだ。
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