テレワーク・在宅ワークが定着し、電話の機会が以前よりも増したことはもちろん、テレビ電話やリモート会議の機会が増えた方は、読者の中にも多いのではないだろうか。
昨今の主流であるカナル型のイヤホンや密閉型のヘッドホンなどを自宅で長時間使用すると、本来はメリットであるはずの「周囲の音を遮断できる点」が、子供やペットの様子が分からなくなったり、来客時のチャイムが聞こえなかったりなど、デメリットになってしまうシーンも少なくない。
テレワークにおいては、通話の音声を聞きながら周囲の音も聞こえるというスタイルが理想的かもしれない。AfterShokzの「OpenComm」は、そんな理想的なスタイルを骨伝導によって実現した、次世代型のヘッドセットだ。
AfterShokzの「OpenComm」は、現在GREEN FUNDINGにてクラウドファンディングを実施中。当サイトでは、代理店であるフォーカルポイントよりプロトタイプをお借りできたので、一般販売に先駆けてレビューをお届けしよう。
バッテリー持ちや接続の安定性などヘッドセットとして定番のポイントに加え、骨伝導デバイスの気になる音質や装着感などもチェックしてみた。
2022年1月10日より、シリーズの新ブラッグシップモデルとなる「OpenRun Pro」のクラウドファンディングが開始されました。
デザインをチェック
まずは「OpenComm」の外観をチェックしていこう。
同デバイスのヘッドバンドには、柔軟性と耐久性を兼ね備えたチタニウムが採用されている。軽く開いたり閉じたりしてみても壊れてしまいそうな危うさはなく、それでいてガチガチに硬いわけでもない、絶妙な強度だ。
ヘッドバンドやブームマイク、イヤホン部分などは全てグレーのシリコン素材に覆われている。構造上、パーツの大部分が長時間耳や頭に触れることになるが、極端に汚れが目立ってしまうことはなく、快適に使用できた。
重量は約33g。イヤホンの重量としてはやや重そうな数値に見えるかもしれないが、実際に持ち運んだり装着してみた限りでは重さが負担になることはなかった。
本体右側には、音量ボタンとマルチファンクションボタンが計3つ搭載。音量ボタンは音量調節は当然として、電源のオンオフやペアリングにも用いられる。マルチファンクションボタンは、着信への応答や通話の終了、リダイヤルなどの操作にワンボタンで対応している。
目立つカラーの物理ボタンを搭載しているあたり、「OpenComm」に想定されている利用シーンが、やや現場やビジネス寄りであることが伝わってくる。手袋をした状態でも押しやすいことが魅力のひとつのようだが、確かにこの手のデバイスにしては個々のボタンは非常に大きく、手探りでも簡単に操作可能だ。
ただし、個人的にはオレンジのカラーはあまり好みではなかった。ボタンが大きいことには指先でボタンの位置を把握できるメリットがあるが、装着してしまえば自分から色は見えななくなる。明るい色でボタンを目立たせる必要性はあまり感じなかったというのが正直な感想だ。
本体と同系統のモノトーンカラーでまとめてくれれば、もう少しクールというか、”現場感”の薄れたイケてるガジェットっぽさが出てくれたように思う。ただし、これは上述の通りそういったシーンを意識した製品という側面がある以上は仕方ないだろう。
ブームマイクを観察すると、側面と先端に2つのマイクが搭載されていることがわかる。これらのマイクにはノイズキャンセリング機能が搭載されており、周囲の雑音を低減しながらこちらの話し声をクリアな状態で相手に届けられる。
ちなみに、「OpenComm」には上記画像のようなハードケースが付属する。左側のメッシュ部分には充電用ケーブルが収納されていた。リモートワークでヘッドセットの持ち運びが必要な場合、専用ケースはありがたい存在だろう。
また、本体はIP55の防塵・防滴に対応しているので、少々の水滴やホコリくらいであれば気にせずに安心して使用できる。
装着感と操作感。耳に入れないから長時間でも快適
続いて「OpenComm」の装着感チェックしていこう。耳を塞がないことが特徴の「OpenComm」は、ヘッドバンドを後ろに回し、一般的なヘッドセットであれば耳に入れるイヤホン部分を耳の手前付近に当てるようにして装着する。
最後にブームマイクを回転させて口元に持ってくれば完了だ。
実際に装着してみた様子がこちら。横から見ると何かを付けていることはわかるもののそれほど目立たたず、正面からはブームマイク以外はほとんど何も見えない。
肝心の装着感についてだが、バッテリー持ちチェックの関係上かなり長時間装着していたものの、耳やその周辺が痛くなってくることはほとんどなかった。そもそも「OpenComm」の場合は、耳の中に何かを入れたり引っかけたりではなく、柔らかいバンドを耳に乗せるような感覚なので、耳にかかる負担は圧倒的に少ないと感じる。
マルチファンクションボタンによる着信の応答も試してみたが、やはりこれだけボタンが大きいと迷わずに操作できて非常に快適。音量調節ボタンも、前後関係さえ把握してしまえばほとんど無意識に操作ができた。
眼鏡をかけていても装着にはほとんど影響はなかった。マスクも問題はないが、マスクか「OpenComm」の一方を外そうとすると引っかかってしまうことも。
骨伝導の音質は?
「OpenComm」を装着した状態での通話も何度か試してみた。まず、同デバイスを通して聞こえてくる音に関しては、可もなく不可もなく綺麗といったところ。
筆者は骨伝導タイプのイヤホンやヘッドセットを使うのが初めてだったので、頭の中に響くように音が聞こえるのでは?と考えてもいたが、特にそういったことはなかった。装着しない状態でも音自体は普通に流れており、耳付近に当てることによってその音が増幅されるような印象だった。
そのため、イヤホンで聞いている音とそこまで大差はない。ただ、耳が塞がっていないので、周囲の音も通話の音も同じレベルで聞こえてくるという体験は新鮮味が感じられた。「OpenComm」であれば、もう宅配便のチャイムを聞き逃すことは絶対にないと言い切れる。
ブームマイクを通じて聞こえるこちらの音もクリアに聞こえるとのことだった。室内だけではなく、あえて交通量の多い通りに面したスペースや広い公園の駐車場など、やや騒がしい場所で通話を試してみたが、ザワザワ感は多少あるものの声は十分クリアに聞こえるようだ。
通話の途中で別のイヤホンのマイクに切り替えると明らかに声が遠くなったとのことだったので、ブームマイクもしっかりと仕事をしてくれている。
また、「OpenComm」はAfterShokzの骨伝導イヤホンのフラッグシップモデル「Aeropex(エアロペクス)」がベースになっているとのことなので、音楽も聴いてみた。
予想通り低音はさほど感じられなかったが、通話に特化していることもあってか中・高音域、特にボーカルの声がかなり明瞭に聞こえる。通話をしないときには、ブームマイクを後ろに向けて骨伝導イヤホンとしても十分に使えるだろう。
音質について、骨伝導イヤホンは耳を塞ぐことで聞こえ方が大きく変わるというアドバイスを頂いたので試しに耳栓をしてみたところ、耳元で小さなスピーカーが鳴っているイメージから、しっかりと頭の中に響いてくる骨伝導らしい音にランクアップしたことを感じた。
明瞭で独特のライブ感がある音は、おそらく骨伝導ならではだろう。弱いと感じていた低音もある程度増幅されるほか、最小の音量でもよく聞こえるため、通常のイヤホンより聴覚的な負担も少ないはずだ。
もちろん、筆者が最初に試した通り耳栓なしでも音は十分に聞こえるし、周囲の音を聞きたいのであれば耳栓は不要だ。「OpenComm」で音楽をより楽しむためのテクニックの1つとして、覚えておくといいだろう。
バッテリー持ち
「OpenComm」もワイヤレスデバイスである以上、バッテリー持ちが気になるところだろう。クラウドファンディングページには、「OpenComm」の使用可能時間は最大16時間であると記載されている。音楽再生の場合は8時間、待機時間は最大14日間だ。
筆者が試してみた際、最も長く通話をしたときの時間は約2時間だったが、フル充電した「OpenComm」は通話後もバッテリー残量100%を示していた。
同デバイスには詳細なバッテリーを確認する手段がないため、Bluetooth設定から確認できる20%刻みのバッテリー残量をチェックしただけであるが、少なくとも2時間の通話では80%を上回る程度にはバッテリーが残っていることになる。
音楽再生時のバッテリー残量の推移 | |
---|---|
経過時間 | バッテリー残量 |
0時間 | 100% |
1時間 | 100% |
2時間 | 100% |
3時間 | 100% |
4時間 | 100% |
5時間 | 80% |
6時間 | 80% |
7時間 | 60% |
8時間 | 60% |
9時間 | 60% |
10時間 | 60% |
11時間 | 60% |
12時間 | 60% |
スマートフォンとBluetoothで接続し、Spotifyを再生し続ける形で音楽再生時のバッテリー消費量をチェックした結果が上記の表。公式ページの「音楽再生の場合は8時間」という表記は計測した条件が不明だが、少なくとも筆者が普段音楽を聴く環境であれば半日以上は余裕で持ちこたえられることが分かった。
通話にしろ音楽再生にしろ、バッテリー持ちが心配になることはまずないだろう。5分の充電で2時間使用可能な急速充電にも対応しており、個人的に「OpenComm」のバッテリーは非常に心強いと感じている。
なお、充電は付属のマグネット式ケーブルを接続して行う。独自規格なので、ケーブルの紛失には要注意。
まとめ。AfterShokz「OpenComm」なら1日中リモート会議でも安心
以上、AfterShokz OpenCommのレビューをお届けした。
筆者は骨伝導で音を伝えるオーディオデバイスを使うのは「OpenComm」が初めてだったが、周囲の音と通話や音楽が重なって聞こえてくる体験は非常に新鮮で興味深かった。
現在のイヤホン市場は、どちらかというと周囲の音を遮れるカナル型が主流になっている。しかし通話先にも周囲にも注意を払いたい、テレワークにおけるリモート会議のようなシーンに限っては、その特徴が必ずしも適しているとは言えない。
そんな変化しつつある需要に、「OpenComm」は的確に応えてくれている。通話中に周囲の状況を把握できることはもちろん、長時間付けていても不快にならず、追加の充電も必要ない。そんなことはやりたくないが、丸1日リモート会議だとしても安心して使い続けられるだろう。
AfterShokz OpenCommは、GREEN FUNDINGにて11月30日までクラウドファンディングを行っている。執筆時点では、定価の14%オフで出資可能。リターンの配送時期は2020年12月の予定となっている。
興味のある方は、ぜひチェックしてみてはいかがだろうか。
プロジェクトに対する驚異的な反響を受け、当初は12月とされていたリターンの配送時期が、約1ヶ月早められたようです。日本向けの大量生産が前倒しで開始され、「2020年11月第2週以降」に製品を発送できるよう予定を繰り上げる旨が案内されていました。
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