indigogoにて出資していた中国GPD製のモバイルPC「GPD Pocket 2」が私のもとにも到着しています。初代GPD Pocketを購入するタイミングを微妙に逃してしまってから、後継モデルが登場したら次こそは買おうと考えていたので待ちに待った購入となり喜びも一入。到着して1ヶ月程度の間に早くも仕様変更があったため、既に私の所有するGPD Pocket 2は旧モデルとなってしまいましたが、改めて開封から現在までキッチリと使い込んでみてのレビューを書いていきたいと思います。
開封
GPD Pocket 2のパッケージは真っ黒な背景に金の文字でロゴが押してある高級感のあるデザイン。7万円もせずに入手できた割には相当しっかりとした作りでしょう。中国からの長旅だったことに加え一時税関で止められてたことも関係してか一部に凹みがあるのはご愛敬です。
箱を開けてみた様子と付属品。箱の本体の真上にあたる部分には端末保護のためのクッションが貼ってあることは好印象。付属品は簡素で、本体、説明書、充電基とケーブルで全てでした。
外観チェック。小型でも充実のインターフェース
GPD Pocket 2本体がこちら。アルミ削り出しによるユニボディはロゴすら存在しないまっさらな状態。見えるところにロゴを配置しない、という試みはこの手のデバイスにおいて非常に珍しいように思えます。
開いてみたところ。初代から引き続きタブレット用を流用しているというディスプレイは左右のベゼルが気持ち太め。その真下にはMacBook Proのタッチバーライクなファンクションキーの列が独立しており、その下にキーボード。筐体が小さいため無駄なスペースを排除しギリギリまでキーボードが広がっていることがわかります。
前後左右からGPD Pocket 2を観察。正面では初代GPD Pocketには存在していた指を掛けるための切り欠きが廃止。内部にファンを搭載していますが吸気・排気は底面とヒンジの内側に設けられたスリットによって行われるため、外観からはスリットが見えない工夫がされています。フルサイズのUSBポート2基は両サイドに配置され、右側面にはUSB Type-Cポート、左側面にはMicro SDカードスロットが存在します。昨今のモバイルノートPCは、12インチMacBookがType-Cポート1基のみを採用し登場したことに影響されてか拡張性に乏しい印象ですが、GPD Pocket 2は充実のインターフェースを備えています。私個人としてはフルサイズのUSBポートにはそこまで魅力を感じていないですが、Micro SDカードスロットの存在には歓喜。現在メインのモバイルマシンに据えているZenbook 3では、カメラからデータの転送をすることを微妙に手間だと感じていましたが、Micro SDカードを直接指すことができるGPD Pocket 2ではそういったストレスからの解放に期待がかかります。
Zenbook 3と並べてみました。12.5インチのZenbook 3が相当な大型機種に見えてしまうほどのサイズ感。Zenbook 3とほぼ同サイズである12インチMacbookとこのGPD Pocket 2が同じCPUを採用しているとは驚きの一言ですね。
変則的なキー配列。「慣れれば打てる」と言われるけれど・・・
初代GPD Pocketでは深さにこだわっていたキーストロークですが、今作では浅めになっています。筐体が小さいため浅いキーストロークの方が心地よく打てると私は感じており、この設計変更には納得。本体の厚みとアルミボディのおかげか、タイピングによるキーボードのたわみは一切感じられず、入力の感触はすこぶる良いです。ただしタイピングの音はそれなりに大きいので注意が必要。高めのパチパチといった音が響くのでキーを強く叩く癖がある人は利用場所次第では気を遣うかもしれません。
キー配列については言うまでもなく変則的ですがもっと大きなサイズのノートPCでも特殊なキー配列であることも珍しくなく、GPD Pocket 2において特別いちゃもんを付けるつもりはありません。しかし使い勝手の上でどうしても気になる点がいくつかありましたので紹介します。
まずはキーピッチ。GPD Pocket 2のキーボードはQ、A、Zの3列それぞれでキーピッチが全て異なっているというよくわからない仕様になっています。そのためか右に行けば行くほどキーのズレが顕著になってしまい、一般的なキーのつもりでタイピングしようとすると「K」や「L」のキーでミスタイプが頻発し、ならばと逆にそちらに意識を向けると「A」「S」「Shift」「Z」「X」辺りのキーの位置に混乱。1ヶ月ほど使っていますが、この設計には未だに慣れてきた感覚もなく快適なタイピングにはたどり着けていない状況です。
続いて左上にある「半/全」キーの存在について。GPD Pocket 2のキーボードは「かな」がふられていないことからもわかるようにUSキーボードとなっており、もちろんWindowsの認識も英語キーボード。本来USキーボードには存在しない「半/全」キーが採用されているのは日本ユーザーのためかと思いきや、この「半/全」キーを押下すると「`」が入力されてしまいます。これはUSキーボードの挙動としては間違っていませんが、「半/全」キーの2つ右隣には同じ役割のキーが独立して存在しています。「Alt」と「半/全」を同時に押すことで日本語入力の切替は可能ですが、これは当然2つ右隣のキーでもできてしまうので、今のところ「半/全」キーが存在している意味がほぼないという残念な状態です。
モバイルPCのキーボードについては最終的に「慣れ」という結論に至ることが多いと思います。しかしGPD Pocket 2のキーボードは理解しがたい設計になっているポイントがあり、正直なところ「慣れ」だけではどうにもなりそうにないと感じています。今後公式にGPD Pocket 2用の日本語配列のファームウェアが提供されるとの情報もありますので、時間がかかってもいいので今よりかは使いやすくなってくれることに期待したいです。
ポインティングデバイス&タッチパネルで操作はスムーズ
GPD Pocket 2では初代GPD Pocketに採用されていたキーボード中央付近のスティック型ポインティングデバイスが廃止され、キーボード右上の光学式ポインティングデバイスへと変更されています。左上に左右クリックボタンが配置され、両手で持てばカーソル移動とクリックが左右の手で操作できる合理的な仕様になっています。この変更については賛否両論あったようですが、実際に使ってみた感想としてはGPD Pocket 2の光学式ポインティングデバイスはかなりまともに使える部類だと思います。範囲こそ狭いですが指先への追従性も悪くなく、指を離せばカーソルもピタッと止まります。極小のタッチパッドとして使えるのはもちろん、押し込むことで左クリックとしても動作するので、単純な操作であればこのポインティングデバイスのみで完結しますし、思った通りの操作は一通りこなせるだけのクオリティには仕上がっている印象です。
また、画面がタッチに対応している点も見逃せません。指先程度の大きさしかないポインティングデバイスでは画面の端から端までカーソルを移動させる場面やスクロールなどは面倒ですが、そういった場合には直接画面にタッチして操作ができるのが非常に助かります。
また、スクロールについてはW10Wheel.NETといったフリーソフトを活用することでより操作性を改善することができました。
GPD Pocket 2のディスプレイにアンチグレアフィルムを貼った記事にて軽く触れましたが、ヒンジ部分にわずかにディスプレイが重なってしまっているため画面の最下部のタッチは難しくなっています。地味ですが、画面下からスワイプしてタスクバーを表示させる、という動作が若干もたつくことになるので注意が必要です。
その1点を除けばこのタッチパネルのレスポンスが思いのほか良く、普段使っているスマートフォンとほぼ遜色ない操作感を得られました。動画編集ソフト「Vegas Pro」は特別タッチ操作に最適化されているわけではありませんが、タイムライン上で指先で直感的に位置を指定しカット、そのままドラッグして移動など割とスムーズに操作ができました。
Lightroomによる写真の編集・現像も試してみましたが、こちらはパラメータをタッチで直接操作するにはデフォルトの表示スケールではちょっと厳しいところ。もちろん拡大すればタッチはしやすくなりますが、肝心の写真のプレビューが見にくくなってしまい不満の残る結果に。ポインティングデバイスとクリックボタンによる操作では繊細なカーソル移動が難しく、わかりきっていたことではありますが扱うソフトや作業の種類は選ぶ必要がありそうです。しかし動画編集でも画像編集でも軽微なものであれば難なくこなせてしまったのはATOMからm3-7y30へとスペックアップしたGPD Pocket 2のポテンシャルを感じられたポイントです。
ファンの制御はかなり大雑把
キーボード上の1列、左右クリックボタンの隣に見慣れないアイコンがありますが、これはファンのオンオフを制御するスイッチ。GPD Pocket 2はこのスイッチを押すことでファンの回転を音がほぼ聞こえないレベルまで落とすことが可能で、その場の状況にあった適切な使い方ができるということになっています。たしかにこのスイッチを押せばファンの音は全く聞こえなくなるのですが、スイッチがオフの場合は基本的にそこそこの音量でファンが回転しています。ブラウザを立ち上げただけでも周囲が気になるレベルの音量でファンが回転し始めるため、ファンの制御はほとんどこのスイッチありきのかなり大雑把な仕様になっているものと思われます。小型であることがウリである以上様々な利用シーンが想像できますが、ファン音は常に気にかけておきたいところです。
まとめ
GPD Pocket 2の強みはとにかく小さいこと。これまでノートPCを持ち運ぶには、「ノートPCを持ち運ぶため」のバッグを必要としていました。それは薄く小型軽量なZenbook 3でも同様で、私は主にリヒトラブのバッグインバッグやTwitterキャンペーンで頂いたノベルティのOPPOバッグを使っていますが、GPD Pocket 2にこれらは不要。タブレット用のスペースがある楽天で人気のボディバッグやガジェット用ではないTKの小型のクラッチバッグ、洋服のポケットにすらすんなりと収まってしまい、PCのためにバッグを選ぶという行為が一切必要なくなりました。もちろん、ある程度の作業をすることがわかっている場合は上記のバッグにZenbook 3を入れて持ち運ぶことに変わりはありませんが、どんなバッグにも放り込めるGPD Pocket 2は、”使うかわからないけどとりあえず入れておく”ことができ、どんな状況でもPCが開ける状態にしてくれるので、非常に重宝します。
VAIO type PやEee PCの中古端末で遊んでいた私にしてみれば、これだけの小型なPCが当たり前のようにサクサクと動作し実用性があるというだけで感心してしまいます。ストレージがSSDではなくeMMCではありますがスペックと価格のバランスも悪くなく、比較的手が届きやすいところに位置していることも初代含めGPD Pocket 2の評価を上げているポイントではないかと思います。傍から見ればどうしたってイロモノに見えてしまうマシンかもしれませんが、使ってみれば”案外できる奴”であることがわかってくるはず。一癖も二癖もあること(主にキーボードついては)に間違いはありませんが、それを補って余りある魅力に溢れたデバイスだと思います。
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