完全ワイヤレスイヤホンは、ここ数年で急激に広まり定着してきたガジェットだ。ケーブルの断線や絡まりといったストレスがなく、コンパクトなのでカバンや洋服のポケットにすっぽりと入る。筆者も、外出先で音楽を聴く際に重宝している。
しかし、毎日持ち歩くとなると気になるのが充電の手間。もし現在完全ワイヤレスイヤホンの購入を検討していて、できるだけ充電に手間がかからないタイプがいいと考えている方は、Qi互換のワイヤレス充電が可能なイヤホンを買うといいだろう。
例えば、本記事で紹介するVANKYO Alpha X400もそのひとつだ。今回、国内の販売元であるVanTop Japan株式会社よりVANKYO Alpha X400の実機を提供していただいたので、音質や装着感、電池持ちなど本製品の使用感について詳細なレビューをお届けしよう。
外観とデザイン
まずはAlpha X400の外観をチェックしていこう。カラーバリエーションは展開されておらず、シンプルなブラック1色のみがラインナップされている。
バッテリーケースは角を丸めたほぼ正方形。筆者が所有している完全ワイヤレスイヤホンのなかではGalaxy Buds Liveのケースに近い形状をしているが、サイズはX400のケースの方が一回り大きい。
ケースサイズ | 幅60×奥行き56×高さ32mm |
---|---|
重量 | 片耳4g |
ケースの正面には指をかけるための切り欠きとバッテリー残量を示すLEDインジケーター、背面には充電用のUSB Type-Cポートを搭載。完全ワイヤレスイヤホンに限らず低価格帯のガジェットは、未だにmicroUSBを採用しているモノもあるので、Type-Cポートの搭載は地味ながらも評価できるポイントだ。
切り欠きの範囲は狭いうえに浅く、周囲の質感もサラサラとしているので、正直なところやや開けにくいと感じた。
LEDインジケーターは点灯と点滅を組み合わせて、現在の充電状態を以下のように示してくれる。
LEDインジケーターのパターン | バッテリー残量 |
---|---|
1つ点滅 | 0~40% |
1つ点灯・1つ点滅 | 40~70% |
2つ点灯・1つ点滅 | 70~100% |
3つ点灯 | 100% |
ケースの質感は、モバイルバッテリーや充電器などによく見られるサラサラとしたプラスチック。安っぽくはないものの、特別高級感や手触りのよさを感じたりするほどでもなかった。X400の価格は税込でギリギリ4,000円弱なので、妥当なところだろう。
ただし、ケースの蓋の開き方に関しては少し気になる点があった。
こちらはX400のケースの蓋を最大限まで開いた様子。ほぼ90°までしっかりと開いているのだが、ヒンジの固定力が弱く、ほんの少し傾けたり触れたりするだけですぐに蓋が閉じてしまう。
実はこのヒンジの弱さはX400に限ったものではなく、同価格帯の完全ワイヤレスイヤホンには結構頻繁にみられる。X400の場合は切り欠きが付いているもののあまり蓋が開けやすいとも言えないので、もう少しこだわってほしかったと思うポイントだ。
ケースを開くと、イヤホンが縦方向に並んでいた。手前側がやや盛り上がっている独特な形状だが、おそらくバッテリーが入っているものと思われる。
イヤホンの間にあるボタンは、リセットボタン。約10秒間長押しすることでイヤホンのリセットが可能なので、新たなデバイスとペアリングしたい場合や、ペアリングがうまくいかない場合に使うことになる。
イヤホンはイヤーピースを耳に押し込むカナル型。ハウジング部分からバッテリーやタッチパッドが搭載されたスティックが飛び出ている、AirPodsに近いスタイルを採用している。
イヤーピースは一般的な形状。最小から装着されている分のほかに、付属品として3種類のイヤーピースも同梱されているので、サイズや好みに応じて付け替えも可能だ。
また、実際に試すことはできていないが、X400はIPX6の防水設計となっている。水に沈めるような使い方はできないが、噴流に対する保護性能は証明されていることになるので、屋外で使用中に雨に当たったり、トレーニング中に汗をかいたりといったシーンでも、安心して使用できるのはX400の大きな強みと言えるだろう。
装着感と操作性
ここからは、実際にX400を装着してみた感想を述べていこう。先ほども述べたが、X400はカナル型のため耳にグッと押し込むようにして装着する。
X400を装着してみた様子を第三者の視点から見るとこんな感じ。耳からスティック部分が大きく飛び出していることが気にならないといえば嘘になるが、同様のデザインを採用したAirPodsが市民権を得た今となっては、些細な問題だろう。
完全ワイヤレスイヤホンとしては定番のデザインのため心配もしていなかったが、装着感は非常に良好だ。むやみに耳を圧迫したり、パーツの一部が当たって痛みを感じたりなどはなく、X400を付けた状態でストレスなく生活できる。
X400で音楽を聴きながら階段の上り下りを試したり、付けたままフィットボクシングをやってみたが、耳から落ちることはなく、落下の心配もない程度には安定していた。カナル型である以上耳を塞ぐ独特の圧迫感はあるものの、長時間の使用もこなせるクオリティだと感じる。
豊富なタッチ機能
多くの完全ワイヤレスイヤホンがそうであるように、X400もスティック部分にタッチセンサーが搭載されており、タップや長押しといった動作で一定の操作を行える。
音楽を聴いている際に使用できる操作は、音量の調節と曲の再生・一時停止、曲送りと曲戻し。曲の再生・一時停止は左右どちらのイヤホンでも操作できるが、その他の機能は左右のイヤホンそれぞれ固有の機能として割り当てられている。
操作 | 機能 |
---|---|
右イヤホン長押し | 音量アップ |
左イヤホン長押し | 音量ダウン |
1回タップ | 再生 / 一時停止 |
右イヤホン2回タップ | 曲送り |
左イヤホン2回タップ | 曲戻し |
豊富な機能があるのは非常に嬉しいのだが、左右に機能が割り振られ固定されていると、片方の腕が塞がっているときに操作しにくく感じてしまうのも事実。
欲を言えば専用のアプリから機能をオフにしたり、自由に割り振ったりといった機能があればよかったのだが、さすがに求めすぎだろうか。いずれにせよ、機能が豊富な点は嬉しい。
また、音楽再生時の操作だけではなく、通話時の操作も豊富に用意されている。筆者はX400を頂いてから数回程度しか通話を試していないため説明書を見ないと操作できないレベルだが、やはりこちらも機能は豊富。
タッチパッドの感度もよく、長押しやダブルタップの精度も問題なし。装着時や軽く位置を調節しようとX400に触れた際にシングルタップとして誤反応してしまうのは、物理ボタンではなくタッチパッドである以上仕方ないところだろう。
タッチエリアに慣れてしまえば誤反応も極力避けられるので、操作性は普通に快適で、十分に使っていけると感じる。
接続の安定性
X400はBluetoothでスマートフォンと接続する。もちろん、Bluetoothに対応していればデスクトップPCやノートPCとも接続し、音楽を聴ける。バージョンは、Bluetooth 5.0だ。
しっかりと充電された状態のX400は、ケースを開けるだけでペアリングモードとなる。PCやスマートフォンなど接続したいデバイスのBluetooth設定画面から、「Alpha X400」を選ぶとペアリング完了。
X400側ではペアリングが完了すると「Pairing!」「Connected!」という音声が流れるが、少々安っぽさは否めない。
筆者が主にX400と接続していたスマートフォンはGaalxy Note20 Ultraだった。Gaalxy Note20 Ultraは、自宅でも外出先でも常にGalaxy Watch3とBluetoothで接続しており、財布や鞄を持ち歩いている場合はMAMORIOとも接続されている。
そんなBluetoothまみれの環境でも、X400の接続には特に影響はなさそうであった。社会情勢を考慮して明らかな人混みは避けていたものの、それなりに人の多い新幹線が通る駅などにもX400を装着したまま行ってみたが途切れることはなく、接続は非常に安定している印象だ。
ちなみに、X400に限った機能ではないがケースを開けると前回接続していたデバイスと自動的にペアリングされるので、毎度ペアリングする手間はかからない。
音質
続いて、VANKYO Alpha X400の音質についてレビューしていこう。ちなみに、同イヤホンが対応しているコーデックは、SBC・AACの2種類。
筆者が音質を検証したデバイスはAndroidスマートフォンだが、コーデック的にはiPhoneやiPadなどのiOS・iPad OSデバイスと接続した方がより高音質なサウンドを楽しめるだろう。
Bluetoothバージョン | Bluetooth 5.0 |
---|---|
対応コーデック | SBC・AAC |
ドライバーサイズ | 6mm |
X400で音楽を聴いてみると、価格にしては解像度や音の分離感がある程度感じられることに気がついた。奥行きや空間はあまり感じられずどちらかというと平面的な音ではあるものの、低価格帯のワイヤレスイヤホンにしては頑張っている方だろう。
最も強調されているのは低音域で、ドラムやベースの音はしっかりと迫力たっぷりに鳴らしきる印象。ただし、音量を下げるとパッタリと低音が弱まってしまい、その境界が何となくわかってしまう点がやや気になった。
中音域は特に癖がなく、普通に綺麗な音。ミスターチルドレンやポルノグラフィティ、東京事変など定番のJ-POPを聴いてみたが、しっかりとボーカルが前面に感じられて、楽しく聴くことができた。
高音域は気持ちの良い伸びが感じられる一方で、雑とまでは言わないもののやや繊細さに欠ける印象。低音同様に勢いやダイナミックさが感じられる音作りで、音楽のジャンルによってはもう少し控えめにしてほしい、という場合もあるだろう。
税込4,000円以下という価格を考慮すれば、個人的には全然アリな音質だった。ただし、音質にこだわるオーディオマニアにとっては物足りなく感じるかもしれない。
通話の音質は?
3回ほどではあるが、X400を使った通話も試してみた。通常の電話のほか、LINEの無料通話、PC版LINEのビデオ通話を利用したリモート飲み会などでX400をイヤホン兼マイクとして利用したが、聞こえてくる音は非常に鮮明で、非常に聞き取りやすい。
こちらからの発する音声は直接確かめられていないが、3件とも背景のエアコンによるノイズもなくクリアに聞こえているとのことだった。
X400は、音楽や動画を楽しむのはもちろん、テレワーク等にも十分活用できそうだ。
電池持ち
X400は、公式情報によるとイヤホン単体で最大5時間連続で音楽を再生できるとのことなので、実際に検証してみた。
バッテリー持ちの検証は、Galaxy Note20 UltraとX400をペアリングし、Spotifyの音楽をひたすら垂れ流す形で行った。X400には専用アプリ等はないため、Bluetooth設定に表示されるバッテリー残量を記録している。
経過時間 | バッテリー残量 |
---|---|
0分 | 100% |
30分 | 100% |
1時間 | 90% |
1時間30分 | 80% |
2時間 | 80% |
2時間30分 | 70% |
3時間 | 60% |
3時間30分 | 60% |
4時間 | 50% |
4時間30分 | 20% |
5時間20分 | 0% |
約5時間20分前後でバッテリーがゼロになるという結果に。4時間くらいまではかなり粘り、4時間を過ぎたあたりから急激に持久力が落ちているようだが、多少は誤差も含まれているだろう。
ほかの完全ワイヤレスイヤホンのレビューでも延べてきたが、筆者が完全ワイヤレスイヤホンに求める電池持ちは、「最低4時間、5時間持てばありがたい」といった感じなので、X400の電池持ちは申し分ない。
最近の社会情勢では難しくなってしまったが、新幹線で遠出する際にも片道を充電なしで乗り切れるだけのバッテリーを備えている。
また、ケースを組み合わせれば最大30時間の音楽再生が可能。10分の充電で1時間の音楽再生が可能な急速充電にも対応しているとのことだったので、バッテリーが空になったイヤホンを10分間だけケースに戻し、どれくらい残量が回復するのかをチェックしてみた結果が以下だ。
経過時間 | バッテリー残量 |
---|---|
0分 | 0% |
10分 | 60% |
電池持ちの検証から、60%のバッテリーがあれば約2時間前後の音楽再生が可能なことがわかる。状況にもよるとは思うが、急速充電機能は公式情報よりも実測値の方がやや上回っていた。
Qi規格のワイヤレス充電に対応
VANKYO Alpha X400が、ワイヤレス充電に対応していることは忘れてはいけない。低価格帯の完全ワイヤレスイヤホンでワイヤレス充電に対応しているモデルは多いとは言えず、さらにX400の場合は独自規格ではなくQiに対応している。
そのため、一般的なQi充電器や、Galaxy S10以降のGalaxyスマートフォンに搭載されているワイヤレスパワーシェア機能や、ファーウェイ製スマートフォンのリバースチャージでも充電可能。
充電用のポートも最新のスマートフォンとケーブルを共有しやすいType-Cが採用されており、外出先でも手軽にケースごと充電できる。低価格ながら充電に対するストレスが極力排除されている点は、X400の大きな魅力だ。
まとめ。VANKYOのX400は充電の手間を減らしたい方におすすめ
以上、VANKYO Alpha X400のレビューをお届けした。
音質や機能、質感に関しては価格相応の作りになっているが、電池持ちのよさとQi規格のワイヤレス充電に対応している点は大きなメリット。低価格帯の完全ワイヤレスイヤホンに興味があって、ワイヤレス充電対応モデルを探しているのであれば、真っ先に候補のひとつに挙げられるだろう。
VANKYO Alpha X400は、執筆時点でAmazonにて税込3,980円で販売中。気になった方は、ぜひチェックしてみてほしい。
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