現在、完全ワイヤレスイヤホンの市場には高級なモデルから格安なモデルまで、さまざまなタイプがラインナップされている。
値段の大小に関わらず、多かれ少なかれ何らかのこだわりを持って作られている点が面白さでもある。音質はもちろん、ノイズキャンセリングだったり、バッテリー持ちだったり、そのこだわりはコンセプトによってさまざまだが、ケースのデザインや開閉音にまでこだわられているモデルは、あまり多くないだろう。
現在クラウドファンディングを実施している「ZIP20(ジップ20)」は、金属の質感と癖になる開閉音が特徴の完全ワイヤレスイヤホンだ。
今回、当サイト宛てに正式発売前である「ZIP20」の実機を提供していただけた。実際にしばらく使ってみたので、特徴的なデザインはもちろん、音質や装着感、電池持ちなど本製品の全体的な使用感について詳細なレビューをお届けしよう。
デザイン
まずは「ZIP20」の外観をチェックしていこう。クラウドファンディング実施中の同製品は、モダンブラックとダークグレーの2色のカラーバリエーションが用意されている。今回提供していただいたのは、モダンブラックだ。
実際に触れてみればすぐに気が付くと思うが、「ZIP20」のケースはほかの完全ワイヤレスイヤホンのケースとは全く違う。
こちらが「ZIP20」のケース。ケースの素材には、サラサラとしたマットな加工が施された金属(亜鉛合金)が採用されており、手に取った第一印象は「ひんやり&ズッシリ」だ。
完全ワイヤレスイヤホンのケースというと、プラスチックが採用されたタイプが非常に多い。もちろん、上位のモデルはプラスチックのチープさを感じさせない加工がされているのだが、「ZIP20」には正真正銘の金属が採用されているため、手に取っただけでわかる間違いのない高級感がある。
光沢があるのに汚れが付かないマットな手触り、中身が詰まっていることを感じさせる確かな重さ、指先に伝わる温度感などは、「ZIP20」だからこそ得られるラグジュアリーな体験だ。
ケースにはもう1つこだわりが隠されている。こちらの画像は「ZIP20」の背面だが、一般的な完全ワイヤレスイヤホンのケースにはあるはずの「蓋のヒンジ」が見えなくなっているのだ。
デザインにとことんこだわるYOBYBOはヒンジを美しくないと考え、特許を取得した技術により隠してしまったとのこと。言われなければ気が付かない些細な部分かもしれないが、細部まできっちり考え抜かれていることが伺える。
サイズ | 幅50.51×高さ48.5×厚さ21mm |
---|---|
重量 | 70.2g |
サイズと重量は上記の通り。完全ワイヤレスイヤホンのケースとしては比較的コンパクトな部類だろう。
デザインに関しては非常に満足している一方で、個人的には正面に堂々と配置されているロゴはもう少し何とかしてほしかったとも感じる。ヒンジを隠すくらいこだわるのであれば、目立たないようにしたり、カッコいいフォントにしたりなど、ロゴにも何かしらの工夫がほしかった。
乾いた開閉音が癖になる
既にお気づきの方も多いかもしれないが、「ZIP20」はジッポライターをコンセプトにデザインされている。上記で紹介した金属製の高級感ある設計は、ジッポライターからのインスパイアによるものだ。
そしてもう1つのジッポライターらしさが開閉音。「ZIP20」の蓋を開閉すると「カチンッ!」という乾いた音が響くのだが、これが非常に癖になる。音楽を聴いているときでもでもそうでなくても、手遊び的に蓋をカチカチ開閉したくなる心地良さだ。
ケースを開けてみた様子がこちら。ゴールドの装飾が施されたイヤホンの一部が露出しており、こちらもやはり高級感がある。
一方、イヤーピースが外側を向いて収納されているため、取り出した後に一度イヤホンを回転させなければならない点が気になった。小さく落としやすいイヤホンは、できるだけ簡単に扱いたいと思う。
また、収納されている状態だとイヤホンと蓋の距離が近く、取り出す際に指が蓋に引っかかりがちだった。コンセプト上仕方のない部分もあるのかもしれないが、設計がややデザイン優先気味で、使用中の些細な点で詰めが甘いと感じる。
取り出したイヤホンがこちら。ケース同様にイヤホンにもマットな加工が施されており、質感は申し分ない。
イヤーピースを耳に押し込んで装着するカナル型を採用しており、ゴールドの縁取りで囲まれた部分はタッチパッドになっている。イヤーピースは、デフォルトで装着されているモノを含めると合計4サイズが同梱されている。
また、実際に試すことはできていないが、「ZIP20」はIPX4相当の防水設計となっている。水に沈めるような使い方はできないが、屋外で使用中にちょっと雨に当たったり、トレーニング中に汗をかいたりといったくらいであれば、安心して使用できるはずだ。
接続の安定性
「ZIP20」は、イヤホン本体をケースから取り出すだけですぐにペアリングモードとなる。スマートフォンのBluetooth設定から、「ZIP20」を選択するだけですぐに接続が完了し、音楽を楽しめる。
Bluetoothのバージョンは5.2で、チップには最新のQCC3040を搭載。駅やショッピングモールなど比較的人の多い場所でも使ってみたが、接続がブツブツ切れるようなことはなかった。
筆者は普段からスマートウォッチを装着し、自宅にはマウスやキーボード、紛失防止タグなどありとあらゆるBluetoothデバイスが転がっているが、そういった環境でも通信のクオリティに変化はなし。
「ZIP20」の接続は、非常に安定していると言っていいだろう。
なお、接続はBluetoothなので当然ながらスマートフォンだけではなくPCやBluetooth対応の音楽プレイヤーなどとも接続可能。ケースから取り出せば、最後にペアリングしていたデバイスに自動で接続される。
装着感と操作性
続いて、「ZIP20」の装着感について。先ほども軽く触れたが、同イヤホンはカナル型を採用しており、耳栓をするように装着する。そのため、周囲の騒音を物理的にカットしながら音楽を楽しめる。
耳へのフィット感は非常に良好で、痛みや気になる異物感もない。ランニングのお供としても使ってみたが、落ちる心配は全く必要ないと言っていいほど安定していて自分でも少し驚いた。
耳から長い軸が飛び出すスタイルはどうしても好みが分かれるかもしれないが、これだけ完全ワイヤレスイヤホンが普及した今となってはあまり気にする必要もないだろう。
操作 | 機能 |
---|---|
右イヤホンタップ | 音量アップ |
左イヤホンタップ | 音量ダウン |
左右どちらかを2回タップ | 再生 / 一時停止 |
右イヤホン長押し | 曲送り |
左イヤホン長押し | 曲戻し |
ゴールドで縁取られた部分はタッチパッドになっており、スマートフォンを取り出さなくてもタップによる操作が可能。
個人的にイヤホンのタッチ操作は誤操作しやすいのであまり好きではないが、「ZIP20」のタッチパッドは周囲より若干盛り上がっており質感も微妙に異なるため、かなり使いやすいと感じた。
1回のタップが音量調節に割り振られている点も気に入った。装着時に誤って指が触れてしまったとしても音量が1つ上がるまたは下がるだけであり、曲が停止したり変わったりしないため誤タップによるストレスを感じにくいはずだ。
音質
続いて「ZIP20」の音質をチェックしていこう。同イヤホンは先述の通りBluetooth 5.2に対応しているほか、AACとaptXの両方のコーデックを利用できるため、iPhoneでもAndroidでも高音質な音楽を再生できる。
Bluetoothバージョン | Bluetooth 5.2 |
---|---|
対応コーデック | SBC・AAC・aptX |
ドライバーサイズ | 10mm |
肝心の音質だが、全体的な傾向としてはフラット気味で、低音や高音が極端に強調されているということはない。ガンガンとサウンドをかき鳴らすというよりはナチュラルで優しい音作りになっているため、ジャンルを問わずに聞き疲れせず楽しめる。
音の粒感や解像感はやや弱いが空間的な表現は得意としており、平面ではない奥行きのあるサウンドを体験可能だ。
低音・高音は共に優しい傾向にあり、ドゥンドゥンと体に響くようなドラムや耳に突き刺さるシンバルは感じられず、上品な仕上がり。人によっては物足りないかもしれないが、外観デザインと音質の両方を含めて大人っぽさを演出しているようで、コンセプトが一貫している。
ボーカルはどちらかというとパキっとした、くっきりハッキリな印象で、耳に向かって真っすぐに音を届けてくれる。ボーカルが楽器に埋もれてしまうことがないので、バンドサウンドも問題なく楽しめた。
通話時の音質も〇
数回ではあるが、電話やLINEのビデオ通話の際にも「ZIP20」をイヤホン兼マイクとして使用してみた。
こちら側では常にエアコンが動作している状態で通話していたが、相手側には気になるノイズ等はなく鮮明に音が届いているとのことだっだ。
相手側の音声もクリアで、非常に聞き取りやすい。テレワークのお供としても十分使えるクオリティだ。
電池持ち
最後に電池持ちの検証結果を報告しておこう。公式情報によると「ZIP20」は、イヤホン単体で最大約6.5時間の音楽再生が可能とのこと。
実際に「ZIP20」をGalaxy Note20 Ultraに接続し、Amazon Musicを再生し続けてBluetooth設定の画面からバッテリー残量の推移をチェックして記録した。
経過時間 | バッテリー残量 |
---|---|
0分 | 100% |
1時間 | 90% |
2時間 | 90% |
3時間 | 80% |
4時間 | 70% |
5時間 | 50% |
6時間 | 40% |
7時間 | 20% |
8時間20分 | 0% |
結果はこちらの表の通り。約6.5時間という、公式情報を大きく上回る8時間以上のバッテリー持ちを記録した。
もちろん、バッテリーの消費スピードはさまざまな要因により左右されるため、必ずしも8時間持続するわけではないが、それだけのポテンシャルを持っていることは参考程度に知っておいても損はないだろう。
なお、ケースを含めると最大で約33時間音楽再生が可能とされているので、長時間の移動の際もバッテリーの心配をする必要はほとんどないと言っていい。
まとめ
以上、YOBYBO「ZIP20(ジップ20)」のレビューをお届けした。
最大の特徴であるジッポライターをモチーフにしたデザインと蓋の開閉音は非常にユニークで、高級感と遊び心を合わせ持つハイクオリティな仕上がりだ。完全ワイヤレスイヤホンであるにも関わらず、手持無沙汰なときにカチカチしたくて何となく手が伸びてしまう。
設計に関してはやや詰めが甘い部分も見られたものの、とりあえず慣れてしまえば実用に問題はなかった。音質も価格相応でバッテリーの持ちは非常によいので、普段使いのイヤホンとして十分に使っていける。
「ZIP20(ジップ20)」は現在、GREEN FUNDINGにてクラウドファンディングを実施している。出資できる期間は3月15日までとなっているので、興味がある方はぜひ以下からチェックしてみてほしい。
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