ソニー最新のミドルレンジスマートフォン、Xperia 10 II(エクスペリアテンマークツー)を購入したので、レビューをお届けします。
2019年に登場したフラッグシップ、Xperia 1を筆頭にソニーはXperiaシリーズを一新。アスペクト比21:9のディスプレイを搭載した縦長ボディという他に類を見ない特徴を手に入れ、一気に注目を集めました。
Xperiaの新たな個性となった縦長ディスプレイは、本機Xperia 10 IIでも健在。初代Xperia 10と比較するとカメラがデュアルからトリプルに増加、プロセッサもより新しい世代へとアップグレードされ、できることの幅が広がりより扱いやすいモデルへと変貌しています。
本記事では、Xperia 10 IIのベンチマークなどのパフォーマンス面、デザイン、バッテリー、カメラ性能などの特徴を詳細にレビューしていきます。本製品はドコモ、au、ワイモバイルから発売されているので、購入を検討している方の参考になれば幸いです。
スペック。初代Xperia 10と比較
まずはXperia 10 IIのスペックをチェックしていきましょう。初代Xperia 10と、Xperiaシリーズでは珍しい国内でも発売されたミドルレンジ機であるXperia 8とも比較してみます。
Xperia 10 II | Xperia 10 | Xperia 8 | |
---|---|---|---|
OS | Android 10 | Android 9.0 | Android 9 |
ディスプレイ | 6.0インチ/有機EL (2,520 x 1,080ピクセル )、アスペクト比21:9 | 6.0インチ / 液晶(2,520 x 1,080ピクセル )、アスペクト比21:9 | 6.0インチ/ 液晶(2,520×1,080ピクセル)、アスペクト比21:9 |
プロセッサ | Snapdragon 665 | Snapdragon 630 | Snapdragon 630 |
メモリ / ストレージ | 4GB / 64GB | 4GB / 64GB | 4GB / 64GB |
背面カメラ | メイン:1200万画素 / F値2.0 超広角:800万画素 / F値2.2 望遠:800万画素 / F値2.4 |
メイン:1,300万画素 / F値2.0、 深度測定:500万画素 / F値2.4 |
メイン:1,200万画素 / F値1.8 深度測定:800万画素 / F値2.4 |
インカメラ | 800万画素 / F値2.0 | 800万画素 F値2.0 | 800万画素 F値2.0 |
バッテリー | 3,600mAh | 2,870mAh | 2,760mAh |
急速充電 | USB PD対応 | USB PD対応 | USB PD対応 |
防水防塵 | 防水(IPX5/IPX8) 防塵(IP6X) | 非対応 | 防水(IPX5/IPX8)防塵(IP6X) |
OSには最新のAndroid 10を採用。ディスプレイのサイズや解像度はXperia 8 / Xperia 10と同等ですが、液晶から有機ELに変更された点は嬉しいサプライズです。
メモリとストレージはキープされているものの、プロセッサはSnapdragon 665へとアップグレード。国内では2万円台のOPPO A5 2020等が採用しているプロセッサですので、正直価格を考慮するともう一声欲しかったところではありますが、特段パワー不足を感じるシーンは少ないと思われます。
最も大きな変更点はカメラ構成。デュアルカメラからトリプルカメラへと進化したことで、広角・望遠・超広角の3つの画角を網羅しています。上位モデルXperia 1 IIは「瞳AF」や「Cinema Pro」「Photograpy Pro」といったアプリに対応していますが、本製品は非対応で差別化。カメラの作例は以下で詳しく紹介します。
バッテリー容量が大幅に増量している点も見逃せないポイント。バッテリー持ちに関しても後に触れるのでここで詳細を述べることは控えますが、満足度はかなり高いです。
ベンチマークスコア
ちなみに、Xperia 10 IIのAntutuベンチマークスコアは「176036」という結果に。初代Xperia 10のAntutuベンチマークスコアは「90296」だったため、大幅に伸びていることがわかります。
GPUスコアの伸びはCPUスコアと比較すると控えめで、実際の使用感の指標となるUXスコアも劇的に伸びているわけではありません。そのため、Xperia 10やXperia 8と比較してXperia 10 iiの方が重たい3Dゲームがサクサク動くようになる、といった目に見えて分かりやすい変化は少ないかもしれません。
一応個人的に気が付いた点として、サイドセンス起動時のアニメーションが先代と比較するとXperia 10 IIの方が滑らかで、なおかつレスポンスも優れているように感じました。
画質の設定を調整することでPUBGモバイルのような重たいゲームも問題なくプレイ可能。アスペクト比の関係上画面の端に黒い帯が発生していますが、以前と比べるとかなり改善されています。
デザイン。軽量ボディは大きなメリット
続いてXperia 10 IIの本体を見ていきましょう。本製品は、ブラック・ホワイト・ミント・ブルーの4色(auはブルーを除く3色)で展開されていますが、筆者が購入したカラーはミントです。
ミントは非常に淡く爽やかなグリーンで、他社のモデルではあまり見られない特徴的なカラー。バックパネルはカメラ以外完全にフラットで、素材はディスプレイ側と同じガラス(Gorilla Glass 6)です。ギラギラとした反射がない落ち着いた光沢で、指紋も比較的目立ちにくいと感じます。
カメラやロゴの配置などの要素はほとんどXperia 1 IIを踏襲。カラーのおかげでXperia 10 IIそのものに柔らかなイメージを持っていましたが、間近で見て触れたところ、どちらかというとカッチリとしたデザインだという第一印象を受けました。
ディスプレイは今時のスマートフォンにしては上下左右のベゼルがやや太目。しかしアスペクト比21:9という極端に縦長な形状とベゼルの広さに偏りがないデザインのおかげか、思ったよりもベゼルによって野暮ったく見えるようなことはありません。
Xperia 10 IIを手に持った際の率直な感想は”長い”よりも”細い”の方が的確で、握りやすさは抜群。Android 10から導入された戻るボタンのジェスチャー操作による代用やXperiaオリジナル機能であるサイドセンスを活用することで、大部分の操作を片手で行える点は大きなメリットです。
本体サイズ | 約69mm×約157mm×約8.2mm |
---|---|
重量 | 約151g |
細長い形状に加えて約151gという軽量ボディも特徴の1つ。片手操作が快適な理由として、形状以外にこの軽さも大きく関わっていそうです。
スペック比較の際にも触れましたが、本製品が搭載しているディスプレイは有機ELへと変更されています。試しにXperia 10と同じ画像を表示させて簡単に比較してみました(色域とコントラストはスタンダードモード)が、いかにも有機ELらしい鮮やかな色彩は見られず、彩度に関しては意外と控えめ。
黒色の沈み方はさすがの有機ELといった感じでコントラストは強く出ますが、全体的な傾向としてはややサッパリとした色味に感じます。なお、デフォルトで設定されているような上下の端に向けてグラデーションで暗くなる壁紙を設定しておくことで、有機EL特有の黒色によってベゼルの存在がより目立たなくなります。
右側面には音量ボタンと指紋センサーを兼ねた電源ボタンを搭載。指紋センサーの位置はよく考えられており、端末を右手で持つ人であれば親指が、左手で持つ人であれば中指が自然と触れるはずです。
左側面にはSIMスロットを装備。イジェクトピンを使わず手で開けられるツールレスタイプになっています。
充電ポートには先代から引き続きUSB Type-Cを採用。USB PDに対応しています。なお、Qiワイヤレス充電には非対応。イヤホンジャックは上部に搭載されています。
端末全体をグルっと囲うフレーム部分はサラサラとしたプラスチック素材。先代では背面まで一体化した金属のユニボディでしたので、Xperia 10 IIにおいても金属またはガラスを採用してほしかったという声は聞こえてきそうです。
21:9ディスプレイをどう活かすか?
Xperia 10 II最大の特徴と言えるのが、21:9の縦長ディスプレイ。この特殊なアスペクト比は一体どのような場面で役に立つのか?という点について簡単に考えてみました。
まず真っ先に思いつくメリットは、シンプルに21:9のコンテンツを画面いっぱいに表示できること。21:9というアスペクト比は、主に映画などで採用されているシネスコ比率 (2.35:1)とほぼ同じです。
そのため一部の動画配信サービスやYouTubeなどで配信されているシネスコサイズの動画を、黒帯を表示させることなく再生可能。現状では本製品を含む特殊なアスペクト比を備えたXperiaシリーズのみの特権です。
一度に表示できる情報量が多いため、SNSの閲覧やウェブブラウジングも縦長のディスプレイと相性は良好。手狭になりがちな画面分割も本製品であれば実用的なレベルで利用可能です。
先代から引き続き搭載されているサイドセンス機能では新たにアプリペアの登録が可能になっており、あらかじめ登録しておいた2つのアプリを一発で同時に分割表示可能になりました。定番の組み合わせですが、筆者は上部に小さくYouTubeを表示させ、その下でTwitterやchmate、Chromeなどを起動する使い方を愛用しています。
Xperia 10 IIのカメラ性能
広角(約1,200万画素)・望遠(約800万画素)・超広角(約800万画素)のトリプルカメラを搭載したXperia 10 IIのカメラ性能は、どの程度でしょうか。以下で作例を交えつつ感想を述べていきます。
なお掲載する作例は全てリサイズしてあります。
まずはメインの広角カメラで撮影した作例から。スマートフォンカメラにありがちな彩度やシャープネスを極端に強調するようなわかりやすい加工は感じられず、比較的見たままに近い印象。どちらかというと青色や緑色が鮮やかに描写され、赤色やオレンジ色といった暖色系は抑え気味に感じます。
被写体に寄って背景との距離を十分にとれば、背景もそれなりにぼけてくれます。端の方の葉っぱの繊維も確認でき、全体的に均一な解像感です。
続いて望遠カメラの作例。広角カメラの画角が26mmであるのに対して望遠カメラは52mmなので、実質光学2倍ズームとなります。明るさや色味が広角から大きく変わることはなく、自然にズームできています。
倍率が大きいわけではないので、遠くの被写体を大きく写すという用途よりも、余分な背景を切り取ったり歪みを最小限に抑えて被写体に寄る、といった用途が向いているでしょう。
1点気になったのは、ズームの際に望遠カメラを使わずに広角カメラをクロップしている場合があること。縦に3つ並んでいるカメラのなかで望遠カメラは一番下なので、指で押さえることですぐに確認できます。
1倍から光学2倍へはワンタップで切り替えられるようになっていますが、望遠カメラを使うか広角のクロップになるのかは完全にカメラの判断次第。周囲の明るさなどから最適な方をチョイスしていると思われます。
ユーザー側にカメラを選ばせてほしいとまでは言わないものの、どちらの手段で望遠を実現しているのかを表示するくらいの気遣いは欲しかったところです。
最後に超広角カメラ。画角は16mmなので、広角カメラに対して約0.6倍です。
1枚目は画質優先モード、2枚目は歪み補正優先モードで撮影しています。天井の木枠を見ればその差は明らかで、歪み補正はかなり良く効いていることがわかります。
一方で、3枚目がわかりやすい例ですが端にいくにつれて画質が荒くなっていくのがハッキリとわかるのが気になります。広角カメラでは均一な画質を保てていただけにもう一歩踏ん張ってほしかったところです。
また、広角から望遠へのカメラの切替はスムーズですが、望遠から超広角へカメラを切り替える動作が非常にぎこちないことが気になります。もう1点、細かい指摘になりますが、カメラアプリ起動時と広角から望遠へカメラを切り替える際に毎回カメラユニットから「カチッ」という物理的な音が聞こえるのも不安になるポイントです。
音に関しては個体差があるかもしれませんが、カメラ切替時の挙動は他社製スマートフォンではスムーズになるよう力を入れている例もあるので、ソフトウェアアップデート等で改善が可能なのであれば期待したいです。
Xperia 10 IIのバッテリー持ち
先代と比較して軽量化されながらもバッテリー容量を大きく増やしたXperia 10 II。有機ELとダークモードの採用などの細かな部分の恩恵もあってか、バッテリー持ちは非常に良好です。
具体的には、朝8時頃から本製品を持って出かけ、100枚以上の写真を撮影し、動画も撮影。合間にはSNSをチェックしメールの返信、時々YouTubeも再生していましたが、18時頃の帰宅時点では70%以上バッテリーが残っていました。
普段の筆者の使い方はもっとライトなので、充電しなくても2日間は持ってくれそうだと感じます。
Xperiaシリーズではおなじみの「いたわり充電」機能も搭載。USB PDで最高18Wの充電が可能な本製品ですが、同機能を利用することでバッテリーへの負担を最小限に留めた充電方法へと自動で調整してくれます。「いたわり充電」はオン・オフが可能なので、急いで充電したいときはオフに、普段はオンに、といった使い分けも可能になりました。
まとめ。カメラを重視するかどうかが選択の分かれ目に
以上、Xperia 10 IIのレビューをお届けしました。
- デザインと質感
- 軽量ボディ
- 側面の電源ボタン一体型指紋センサー
- 超広角カメラの歪み補正
- バッテリー持ちの良さ
- 2倍ズーム時の広角カメラのクロップ
- カメラ切替時のぎこちなさ
- カメラユニットから聞こえる音
先代と比較すると、物足りなかったパフォーマンスや液晶ディスプレイ、防水防塵、バッテリー容量など多くの弱点を克服しており、Xperiaシリーズのミドルレンジを改めて定義するのには十分な仕上がりだと感じます。
特に軽量さとバッテリー持ちは魅力的で、片手で楽に扱えるサイズ・重量ながら丸2日間は耐えられるロングライフは、使っていて非常に快適でした。
デュアルからトリプルになったカメラは、正直なところ”とってつけた”雰囲気が強く感じられました。普通に綺麗な写真は残せるものの、望遠カメラや超広角カメラでは要所要所で作りの甘さが感じられ、扱いにくさが目立ちます。
同価格帯のiPhone SEやOPPO Reno Aの方が、カメラに対する満足度は上と言っていいでしょう。これらの端末に対しては防水防塵やおサイフケータイ搭載といった日本独自の仕様で差別化を図ることができないため、明確にライバルとなりそうです。
スマートフォンとしての使い心地は申し分ないため、カメラに対してこだわりがあるかどうかで、Xperia 10 IIをおすすめできるかどうかは大きく変わってきそうです。もし購入を検討している場合は、個性的かつ上品なデザインのミントカラー強く推します。
Xperia 10 IIの価格
Xperia 10 IIはドコモ・au・ワイモバイルで販売されており(執筆時点でドコモのみ予約段階)価格はそれぞれ以下の通りです。
Xperia 10 IIの価格比較 | ||
---|---|---|
ドコモ | au | ワイモバイル |
41,976円 | 39,790円 | 38,160円(新規 or MNP / プランM) |
執筆時点ではワイモバイルが最もお得な価格となっていました。
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