11月29日にファーウェイが発売した完全ワイヤレスイヤホンの最新モデル、FreeBuds 3を購入しました。
2016年12月、Apple AirPodsの登場により瞬く間にオーディオデバイスの新たなジャンルとして確立した完全ワイヤレスイヤホン。各スマートフォンメーカーやオーディオメーカーから続々と個性あふれる新モデルが投入されるなか、ファーウェイはFreeBuds 3で初めて日本の市場に参入することになります。
FreeBuds 3の最も大きな特徴は、開放型でありながらアクティブノイズキャンセリング機能を搭載していること。本記事では、ファーウェイがオープンフィット型と呼ぶジャンルでは世界初だと豪語するノイズキャンセリング機能、イヤホンとして最も重要となる音質、完全ワイヤレス型ならではのポイントとなるバッテリー持ちと接続の安定性、ペアリングの方法、使い方などFreeBuds 3の性能・使用感を詳細にレビューしていきたいと思います。
デザイン
発売日に最速で入手したFreeBuds 3、まずはバッテリーケースからその外観をチェックしていきます。カラーバリエーションはセラミックホワイトとカーボンブラックの2色で、今回購入したカラーはセラミックホワイト。長方形が多い完全ワイヤレスイヤホンのケースですがFreeBuds 3は珍しく円形を採用し、サイズ感は手のひらサイズよりはやや小さめといったところ。ハイエンドのイヤホンで白と黒というシンプルなカラーリングが選べるのは少し珍しい気がします。
バッテリーケース | イヤホン単体 | |
---|---|---|
サイズ | ⌀(直径)60.9 × 21.8 mm | 41.5 × 20.4 × 17.8 mm |
重量 | 約48 g | 約4.5 g |
側面には円形のボタンが1つ。蓋を開いた状態でこのボタンを2約秒間押すことでバッテリーケースの電源がオンになります。さらに2秒間ボタンを押すことでペアリングモードへと移行。ペアリング中は下部のインジケーターが点滅します。
FreeBuds 3には独自開発のチップ「HUAWEI Kirin A1」が搭載されています。これによりEMUI 10を搭載したスマートフォンとの初回ペアリングであればバッテリーケースの蓋を開くだけで端末側に自動でポップアップウィンドウが表示され「SET UP」をタップするだけでペアリングが完了しますが、執筆時点では日本でEMUI 10にアップデートされている端末がないため残念ながら試すことはできません。どういった方法であっても初回のペアリングを済ませてしまえば、次回からは蓋を開くだけで自動で接続してくれます。
ちなみにこのケース、蓋の開閉時の「パチッ」という感覚が非常に気持ち良いです。こういった細かい点の設計の丁寧さが、氾濫している格安の完全ワイヤレスイヤホンとの差の1つと言えるでしょう。充電ポートはUSB Type-C。充電中はインジケータがオレンジ色に発光し、充電が完了すると緑色になる仕組み。
Qi規格のワイヤレス充電にも対応しているため、手持ちのQiワイヤレス充電器やワイヤレス給電に対応しているHUAWEIスマートフォンから充電することが可能。上記画像は、HUAWEI P40 Proのワイヤレスリバースチャージ機能でFreeBuds 3を充電している様子です。
充電が独自規格ではないという点は非常に評価できます。
インジケータの色 | FreeBuds 3の状態 |
---|---|
点滅 | ペアリングモード |
オレンジ色 | バッテリーケース充電中 |
緑色 | バッテリーケース充電完了 |
FreeBuds 3はイヤホン部分が外側を向くように収納されています。内側を向いていれば取り出してそのまま付けることができるのですが、この場合は取り出してから一度回転させる必要があります。細かな指摘ではありますが、紛失のリスクがある小さなデバイスのため収納の向きにはできればこだわってほしかったと思います。
ケースから取り出して観察してみると、FreeBuds 3は軸の途中からハウジング部分が飛び出す構造になっていることに気が付きます。ケースから本体を取り出す際はハウジングより上に飛び出た軸の部分をつまむことができるため見た目に反して取り出しにくさはそこまで感じません。ハウジング上部にはマイクと思われる穴が見られ、恐らく環境音を取り込むためのもの。内側には大きな穴が2つ確認でき、片方はマイク、もう片方は近接センサーだと思われます。
装着感。長時間の使用もOKな付け心地
早速FreeBuds 3を装着してみます。
FreeBuds 3は開放型と呼ばれるタイプのイヤホン。カナル型と違いイヤーピースが無いため耳にグッと押し込む必要がなく、どちらかというと耳の構造に引っかけるイメージで装着します。そのため最初はどこが最適なポジションなのかを探りながら装着することになるはず。正直なところ、上記画像を撮影した際もまだ「ここだ!」と言えるほどフィットした位置は見つけられていませんでした。
軸の部分が大きく飛び出すデザインはまさにAirPodsそのものでデザイン性について賛否が分かれるところであると同時に、言われなければFreeBuds 3なのかAirPodsなのか区別がつかない点は少し寂しい気もします。筆者としては耳から白い棒が飛び出すデザインはわりと好意的に見ていますが、自分なりにフィットする位置を見つけたのにも関わらず鏡を見るとイヤホンが大きく飛び出しているように見えてしまい「この位置が正しいのだろうか?」と無駄に悩まされてしまう点については考え物です。
大きく飛び出た白い軸はただ飛び出ているわけではなく、タップすることによる機能がしっかりと搭載されています。
左右共「2回タップ」にのみ上記の機能から1つを選択して機能を割り当てることが可能。デフォルトでは左のイヤホンに[ノイズキャンセリングを有効化 / 無効化]が、右のイヤホンに[再生 / 次へ]が割り当てられています。「1回タップ」ではなく「2回タップのみ」に機能が割り当て可能なのは恐らく誤タップ防止のためだと思いますが、これは英断。センサーの感度が非常に良いため、1回タップに動作を割り当ててしまうと間違いなく鬱陶しく感じていたと思われます。
なおタップによる操作はアプリからカスタマイズが可能です。下記にて詳細を解説しています。
開放型のため圧迫感も無く、約3時間半ほど一度も外すことなく過ごしていても全く苦にならないほどでしたので、装着感は良好と言っていいでしょう。頭を左右に振ってもそう簡単に落ちてくることはなく、短時間でしたがランニングも問題なし。以下で詳しく検証していますが、バッテリーが持つ限りはずっと付けていられそうです。
専用設定アプリ「HUAWEI AI LIFE」
FreeBuds 3には、細かな設定を行う専用のAndroidアプリ「HUAWEI AI LIFE」が用意されています。
▶HUAWEI AI LIFEをインストール – Google Playストア
同アプリではケースと左右それぞれのイヤホンのバッテリー残量の確認やショートカットの設定、アクティブノイズキャンセリングの調整などが行えます。本体のソフトウェアアップデートも同アプリを経由して行うため、FreeBuds 3を利用する上ではほぼ必須のアプリと言っていいでしょう。
ショートカットとは、イヤホンの軸を2回タップした際に以下の中から任意の動作を割り当てられる機能のこと。
2回タップに割り当て可能な機能 |
---|
再生 / 次へ |
再生 / 一時停止 |
音声アシスタント起動 |
ノイズキャンセリングを有効化 / 無効化 |
なし |
機能は左右のイヤホンそれぞれに1つずつ割り当て可能。筆者は左のイヤホンにノイズキャンセリングのオン・オフ、右のイヤホンに曲の再生 / 次の曲を割り当てています。
iPhoneでFreeBuds 3は使えるのか?
FreeBuds 3には欠かせない「HUAWEI AI LIFE」アプリですが、残念ながらiOS向けには配信されていません。同イヤホンはBluetoothで接続するため、iPhoneやiPadとペアリングして音楽を聴くこと自体は可能ですが、上記のようなタッチ操作の設定やノイズキャンセリングの調整はiPhoneやiPadから行うことはできないため、これらの端末での使用を検討している場合は注意が必要です。
ただし、1度「HUAWEI AI LIFE」から設定した内容はFreeBuds 3本体に保存されていることを確認しています。そのため事前にAndroid端末から好みの設定を行っておき、その状態のままiPhoneやiPadで使いまわす、という手段をとることは可能ですので参考までに。
バッテリー持ちは?
何時間連続で音楽を流すことができるのか?という疑問は、完全ワイヤレスイヤホンにおいて重要なポイント。FreeBuds 3の連続駆動時間の公称値は、ノイズキャンセリング機能をオフにした状態で約4時間とされています。
しかしながらHAUWEIが公開しているスペックシートには、ノイズキャンセリング機能をオンにした状態での再生時間は掲載されていないようです。せっかくの注目機能ですし筆者もそのつもりでしたが多くの人はノイズキャンセリング機能をオンにした状態で使うことが想定されますので、バッテリー持ちのほどを検証してみました。
経過時間 | バッテリー残量(ノイズキャンセリングON) | バッテリー残量(ノイズキャンセリングOFF) |
---|---|---|
0分 | 100% | 100% |
30分 | 100% | 100% |
1時間 | 85% | 90% |
1時間30分 | 70% | 80% |
2時間 | 50% | 70% |
2時間30分 | 30% | 55% |
3時間 | 10% | 45% |
3時間10分 | 0% | – |
3時間30分 | – | 30% |
4時間 | – | 20% |
4時間20分 | – | 0% |
ノイズキャンセリングON / OFFそれぞれの状態で音楽を流しっぱなしにし、30分ごとのバッテリー残量をAI Lifeアプリから確認しました。バッテリー残量は左右のイヤホンそれぞれで表示されるため左右でわずかにズレもありましたが、ほとんど誤差の範囲だったため上記の表ではまとめて掲載しています。
結果としては概ね公式情報の通りで、ノイズキャンセリング機能がオフの場合はほぼ4時間でバッテリー残量が0に。比較するとノイズキャンセリング機能をオンにした場合はオフの場合よりも約1時間ほどバッテリーの消耗が早くなるようです。この検証結果をどのように捉えるかは人によるかと思いますが、筆者がノイズキャンセリング機能を必要としているシーンは主に新幹線か高速バスであり、片道10時間以上かかる高速バスではケースによる充電は避けられないため、片道約3時間程度の新幹線乗車時をギリギリ耐えられるのであれば個人的にはとりあえず満足といったところです。
後程詳しく述べますがFreeBuds 3のノイズキャンセリング機能はそこまで強力というわけではないため、新幹線や飛行機といった騒音が気になる環境以外ではあえてノイズキャンセリング機能をオフにして、約1時間の延命を図るという選択肢も十分にアリだと思います。ちなみに、バッテリー残量が0になったFreeBuds 3をケースに戻したところ30分で50%まで、50分経過時点で左右共に100%まで回復していました。バッテリーケースによるイヤホンの充電は中々早い方ではないかと思います。
ノイズキャンセリングの効果は?
開放型(オープンフィット型)では世界初だと謳うFreeBuds 3のアクティブノイズキャンセリング機能。周囲の雑音をマイクで取り込み、逆位相の音を発することでその雑音を打ち消すという機能ですが、耳栓のように耳に蓋をするカナル型とは違い周囲の音が容易に入り込んでしまう開放型では、どれだけ効果が期待できるのでしょうか。
FreeBuds 3でノイズキャンセリング機能を使う場合は、前述したHUAWEI AI LIFEアプリが必須になりますので事前にインストールをお忘れなく。
アプリからノイズキャンセリング機能をオンにすると青いドットとサークルが表示されます。この青いドットを円周に沿って動かし、ノイズキャンセリングの効き具合を耳で確かめながら最適な位置で止める必要があります。
FreeBuds 3のマイクが拾う外部の音とノイズキャンセリングに必要な音の位相を手動で合わせている感覚。斬新なUIで目新しさはあるものの、正直なところわかりにくいというのが本音。
ファーウェイ側が「円周に合わせて位置を調整するだけの直感的な操作」と言いたいのは伝わってくるのですが、どこが初期位置でどれだけ動かせば何がどのくらい変わるのか?という情報が何1つないため、やや不親切な設計に感じます。
ノイズキャンセリング機能を搭載した他社製のイヤホンやヘッドホンで同機能を適用すると周囲の空気がピンと張り詰めたかのような感覚を味わうことができますが、FreeBuds 3ではそこまでの効果は感じられず。車の走行音やエアコンの音などの雑音は”消える”よりも”遠のいていく”感覚に近く、周囲の音を気にすることなく音楽に集中できる環境は十分に手に入ります。
人の話し声やドアの開閉、インターホンなどの比較的高い音は軽減されるものの大幅にカットされるわけではないため、本機を装着したままの会話も問題なく行えるはず。その反面音楽を流さずノイズキャンセリング機能のみを有効にして耳栓の代わりとして自分の世界に入り込む、といった使い方にはあまり向いていないというのが正直な感想です。
また、ノイズキャンセリング機能を試している中でどうしても気になったのがサーッというホワイトノイズ。AI LIFEアプリによる調整を少しでも間違えると耳障りなホワイトノイズが絶えず流れてくることに加え、せっかく好みの位置に調整したのにも関わらず時々思い出したかのように勝手に設定が変わってしまい、突如ホワイトノイズが流れてはすぐに自動で元に戻るというシーンが何度かありました。常に最高のパフォーマンスを発揮できるように自動で調整してくれているのだと思いますが、残念ながら裏目に出たときのストレスは中々の物です。
FreeBuds 3と同じく開放型でアクティブノイズキャンセリングを搭載した完全ワイヤレスイヤホンが、サムスンから登場しました。以下の記事で詳細にレビューしているので、ぜひそちらも参考に。
▶Galaxy Buds Live レビュー。アクティブノイズキャンセリングは控えめ。心地よい低音と解像感が魅力
音質。高音域が美しい!
癖の強いノイズキャンセリング機能とは打って変わって非常に好印象だったのが音質。イヤホンの購入を検討しているのであれば、最も基本かつ最も重要な要素です。
FreeBuds 3の音質を一言で表すとすれば「クリア」がピッタリ。音に透明感と伸びが感じられ、特に高音域ではその傾向が顕著。他のイヤホンでは気が付かなかった楽器が鳴っていることに気が付けたり、コーラスがどこまで響いているのかもハッキリと手に取るようにわかります。
様々なアーティストの音楽をFreeBuds 3で聞いてみましたが、圧倒的に女性ボーカルとの相性が抜群。音の輪郭がはっきりとしているためか臨場感があり、小型の完全ワイヤレスイヤホンながらしっかりと空間で音が感じられ聞いていて非常に楽しくなるような音質です。
また、デフォルトでは高音域の美しさが目立ちますが、決して低音域が弱いわけではありません。
高音域の美しさはあくまでもデフォルトでのチューニングであり、スマートフォン側のイコライザーを低音寄りに調整してみると、HUAWEI FreeBuds 3があっという間に全身に響くような低音を鳴らす迫力型のイヤホンに様変わりします。
高音・低音どちらのポテンシャルも非常に高いものの、低音に関してはイコライザーの設定ありきな部分もあるため、個人的には嫌いではないもののかなり偏った音質であることは確実。音楽全体のバランスを重視する場合にはあまり向かない可能性があります。
ちなみに、ワイヤレスイヤホンである以上仕方ありませんが、遅延はあります。音が重要なゲームなどでは気になるかもしれませんが、YouTubeの動画を見る分には全く気にならなかったのでそこまで心配する必要はないかと思います。
最高レベルの通話音質
そして最も驚いたのが通話時の音質。FreeBuds 3からはまるですぐそばで会話をしているのかと錯覚するほどクリアな音が発せられ、風切り音が気になる外での通話時も相手方にはそれを感じさせませんでした。
風ノイズ低減ダクト設計や骨伝導センサーによるものと思われますが、これまでイヤホンでの通話、特に完全ワイヤレスイヤホンでの通話にはがっかりさせられていたことが多かった分、本機のクオリティには衝撃を受けました。この辺りのこだわりは、さすがはスマートフォンメーカーといったところでしょうか。
まとめ
以上、HUAWEI FreeBuds 3のレビューをお届けしました。
- クリアで気持ちの良い音質
- 開放型でも実用的なノイズキャンセリング
- Qi規格のワイヤレス充電に対応
- 通話音質もクリア
- 「AirPodsのパチもの」と言われても仕方ないデザイン
- AI LIFEによるノイズキャンセリングの調整のわかりにくさ
筆者が最も気に入った点は高音域、特に女性ボーカルの美しさ。東京事変やGARNET CROWといった女性ボーカルのバンドを好んで聞くため、FreeBuds 3の透き通った気持ちの良い音を最初に聞いたときには思わず「これ、いいかも」と声が漏れてしまう程。
一方で注目を集めていたアクティブノイズキャンセリング機能は悪くないクオリティながら期待を超えてくることはなく、どちらかというと設定の扱いにくさの方を主に受け取ってしまったきらいがあります。
手動で行うノイズキャンセリングの設定は必要なのか?自動にはできなかったのか?といった疑問が浮かんでしまい、素直に「ノイズキャンセリングが凄い!」とは言いにくいのが正直なところ。雑音を除去する程度は開放型であることを考えれば十分なので、時折ホワイトノイズが聞こえては去っていく不安定さが改善されれば文句なくおススメできる完全ワイヤレスイヤホンになれるでしょう。
HUAWEI FreeBuds 3は11月29日に発売され、価格はオープン。下記に記載する公式オンラインストアでは17,000円から20,000円程度で販売されています。また、2020年2月14日からはカラーバリエーションにレッドエディションが追加されています。
コメント